150年続く蔵元の灯、継いだ「よそ者」 涙した94歳

 昨年12月26日。山口県下関市菊川(きくがわ)町の田んぼや川に囲まれたのどかな地域に、白と黒に塗り分けられた真新しい蔵が完成した。異業種、よそ者の杜氏(とうじ)による挑戦が幕を開けた。

 日本酒造りに参入する「長州酒造」。杜氏になる藤岡美樹さん(44)は、蒸した酒米に種こうじを振りかけ、発芽させるこうじ室(むろ)の中で、工務店の担当者としゃがみ込んだ。床材のわずかな継ぎ目を繰り返し手でなぞり、「コメが床に落ちて詰まらないか、と。なるべく掃除の負担を軽くして、酒造りの技術の習得に時間を回したいんです」。

 蔵人(くらびと)が効率よく動けるよう、洗米から仕込み、瓶詰めと、工程が時計回りに進む構造になっている。湿度の調節機能に優れる木造で、真夏以外は醸造が可能だ。2階にはガラス張りの通路があり、酒造りの様子が見学できる。

 東京農業大醸造学科の出身。微生物の生態に関心があったが、酒造りの家系とは無縁だ。「日本酒なんて臭くて苦い」。全国の蔵元の跡取りが多く学ぶ大学で、そう言ってはばからなかった。

 大学2年の冬、腹を立てた茨城出身の先輩に呼ばれ、実家の蔵を訪ねた。酒造りが盛んな時期。蒸したての酒米の甘いにおいや、仕込み中のタンクで音を出してはじけるもろみの香りを初めて感じた。搾りたての酒をひしゃくですくって飲んだ。

 〈何てみずみずしいんだ…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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