握りしめるようにつかんだ筆が、白い半紙に落とされた。力強い筆運びでトドメを刺すように最後の一画を書き上げる。大地に根を張る大樹のような「生」の文字が現れた。
「しがらみの多い現代で芯を持って生きるという思いを込めた。確固たる芯を持って、そこから新たな枝葉が伸びてくるイメージです」
盛岡で暮らす高橋卓也(20)は、2歳から筆を持ち始めた。3歳の頃の作品を母親が2年後にポストカード集として出版すると「絵のように文字を書く」と評価された。天才書道家としてマスコミに取り上げられ、テレビに出演した。
「作品じゃなくて、『天才書道家』としての僕が注目されていた」。煮え切らない思いが変わることになったのは、東日本大震災があった2011年だった。復興を願って始まった「東北六魂祭」の題字を揮毫(きごう)するよう、依頼を受けた。
当時12歳。8時間を費やした…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル