新型コロナウイルスの影響による休校の長期化を受け、政府・与党が導入の可否を検討している9月入学制について、自民党内から慎重論が強まっている。9月入学が主流の欧米諸国と合わせることで国際競争力が増すなどのメリットも指摘されているが、党の中堅・若手は制度移行に伴う課題は少なくないと主張。「4月入学」という日本独特の慣例を変えることへの抵抗感も透けてみえる。
「今一番優先して議論しなければいけないのは、遅れてしまった子供たちの学びを取り戻すことだ」
自民党の小林史明青年局長は22日、9月入学について「拙速な議論に反対する」との要望書を岸田文雄政調会長と稲田朋美幹事長代行に手渡した後、記者団にこう語った。
提言には城内実、辻清人、小野田紀美各議員ら中堅・若手約60人が署名。9月入学とした場合、移行期に待機児童が大量に発生し、家計の負担が増加するなどの問題が生じ、必要な法改正も30本以上にのぼるとして慎重な検討を求めた。学習の後れを取り戻すため、夏休みや土曜日を活用し、12カ月分のカリキュラムを11カ月程度に圧縮することも提案した。
9月入学をめぐっては、秋入学が主流の欧米に合わせることで海外留学が容易になり、国際競争力の向上につながるなどの利点が指摘されている。議員グループ「女性議員飛躍の会」共同代表の稲田氏は今月8日、安倍晋三首相に9月入学への変更を前向きに検討するよう要望。文部科学省は来年9月の導入を想定した「一斉実施」「段階的実施」の2案を提示し、自民党のワーキングチームでも検討が進んでいる。
とはいえ、日本では会計年度や就職時期など社会制度の抜本的な改革が必要となるほか、長年の慣例を改めることへの抵抗感もあり、党内の意見は統一されていない。伊吹文明元衆院議長は22日の派閥会合で、4月を新年度としていることについて「これが日本人の伝統で生活のリズムだ」と強調。中曽根弘文元文相も同じ会合で「掛け声だけが先行している。十分な議論がなされないまま、文科省が一定のたたき台を提示してしまった」と嘆いた。
首相は14日の記者会見で、9月入学を「有力な選択肢の一つ」と語り、政府は6月上旬にも方向性を打ち出す。導入されるか否かは「政治判断」に委ねられる可能性が高い。(広池慶一)
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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