新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、災害時の避難所の増設が自治体の緊急課題となっている。自治体と施設や農地などの災害時の使用協定を結ぶJAや農家は「新しい生活様式」に対応した避難対応を模索。防災の専門家は、車中避難の整備の重要性を指摘する。
緊急事態宣言の最中、4月13日に大雨による土砂災害の危険性から市内の518世帯に避難勧告を出した千葉県南房総市。同市が改訂した避難所運営マニュアルでは「感染リスクを負ってまで避難所に行く必要はない」と明記し、安全が確保できる場合は在宅や親戚宅への避難を求めた。
避難勧告から5日後の同18日も同市三芳地区では局地的に竜巻が発生。花きや野菜を栽培する農家・軽込晃さん(59)のハウスを直撃した。ガラス引き戸は粉々に砕かれ、張り替えたばかりの農業用フィルムが吹き飛ばされるなどの被害が出た。この日、避難勧告は出ず、軽込さんは避難しなかったものの「大規模停電などで親戚宅を頼れなくなったら市の指示に従う。でも今、避難所に行くのは不安もある」と複雑な思いを話す。
自治体と災害対策協定を結ぶJAや農家も対応を模索する。熊本地震を機に熊本市と災害協定を結んだJA鹿本では、集荷場や選果場など3施設を救援物資の保管場や避難所として開放する。JAの村上浩二参事は「地震や風水害を想定していたが(開放時は)感染症対策としてビニールなどで間仕切りすることになるだろう。井戸があり水の提供も可能だ」と話す。
車中泊などで対応を考える農家もいる。熊本地震で車中避難を経験した同県西原村の酪農家の山田政晴さん(70)は「コロナ禍では車中避難以外に選択肢はない」と考える。熊本地震発生から2週間、JAの駐車場で車中避難し、朝晩120頭の牛が待つ牛舎に通い、搾乳や給餌を続けた。山田さんは「畑、牧草地の刈り取った跡を避難所に指定すれば、車中避難できる。農地を災害時に避難所にできる体制を地区でとるのが一番だ。農家が先頭に立って地域を守りたい」と強調する。
防災システム研究所の山村武彦所長は「体が不自由で遠くに避難できない人や、感染症にかかれば重篤化しやすい高齢者に目を配り、隣近所で声を掛け合って、車で早めに避難することが重要だ。避難所増設と並行して、車中避難によるエコノミー症候群防止のルールづくりが急務だ」と指摘する。
日本農業新聞
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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