SFの中心で愛を叫んだ覆面作家 伴名練さんの新刊好調

 2010年にデビューした作家、伴名練(はんなれん)さんの約9年ぶりの新刊『なめらかな世界と、その敵』(早川書房)が、若手SF作家の単行本としては異例の売れ行きを見せている。発売初週には、ジュンク堂書店池袋本店の売り上げベスト10で総合部門の1位を獲得。知る人ぞ知る存在から飛躍した、著者の素顔に迫った。

 無数のパラレルワールドを誰もが行き来できるようになった世界で、たった一度きりの青春を生きる少女たちを描く表題作のほか、書き下ろしの中編「ひかりより速く、ゆるやかに」など6編を収めた作品集。10年代にわたって、ぽつりぽつりと発表された短編が一冊にまとまっている。

 顔を出さず、覆面作家として活動している伴名さんは1988年、高知県生まれ。小学2年生のとき、学級文庫として教室の後ろに置かれていた『シュリー号の宇宙漂流記』(今日泊亜蘭(きょうどまりあらん))など、児童向けの叢書(そうしょ)でSFと出会った。

 「タイトルがかっこいいものを読んでいくうちに、SFってものが自分にとって面白いものなんだな、という刷り込みを受けた。図書室にもその叢書が並んでいて、ぜんぶ背にSFって書いてあるから、つい読んじゃう。そうした本があったのは幸運だったなと思います」。ところが、小中高と、まわりにはSFの話をできる相手がいなかった。「一人で書店の早川と創元の棚を読む、みたいな感じでした」

 同じ高知出身で、京都大学のSF研究会に入った書評家の大森望さんを追うようにして、京大へ。「この人の出身大学に行けば、もしかしたらSFを読んでいる人がたくさんいるかもしれない、と。だから、SF研に真っ先に見学に行きました」と振り返る。

 在学中に執筆し、「SFの新人賞がないから」と応募した日本ホラー小説大賞で、10年に短編賞を受賞、その作品を収めた『少女禁区』(角川ホラー文庫)で作家デビューした。

 だが、以後は就職で忙しくなったこともあり、同人誌などに年1~2本のペースでSFの中短編を発表するのみ。しかし、その多くが『年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、創元SF文庫)に収録され、高い評価を受けていた。

 今回の単行本には、さらに選(え)りすぐった作品ばかりを所収。「いきなり読んだ人にはすごい才能と映ったようですが、上澄みだけになっているので……そういう意味では、書き下ろしが一番不安でした」と話す。

記事の後半では、「性別を超えた『恋愛』」について語り、驚きの事実も明かしました。

新海アニメとの共鳴

 巻末に置かれた書き下ろし「ひ…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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