この秋、団地を舞台にした映画がスクリーンをにぎわしている。
深田晃司監督の「LOVE LIFE」の主人公・妙子は息子を連れて今の夫・二郎と再婚し、団地で暮らしている。向かいの棟には二郎の両親が住み、玄関を出れば向こうのベランダの様子が見え、大きな声を出せば会話もできる。
団地の中で起きた事故で悲しみの淵に沈み込む妙子の前にホームレスをしている元夫が現れる。二郎の両親が引っ越していった部屋に身を寄せる元夫……。団地という設定が、近くにいるはずの夫婦や親子に生まれる心理的な「距離」を巧みに表している。
ロケ地は東京都八王子市の都営長房アパート。夜のとばりが下りる一歩手前、2千戸超の団地が順繰りに点灯する光景が美しい。妙子を木村文乃さん、二郎を永山絢斗さんが演じる。
老朽化した団地をめぐる冒険物語
9月半ばから全国ロードショーとともに、ネットフリックスでも配信が始まったアニメ映画「雨を告げる漂流団地」は、老朽化して取り壊される団地が登場する。団地に忍び込んだ小学6年の航祐と夏芽、その級友らが、突如として襲った豪雨とともに団地ごと海に投げ出される冒険物語だ。
脚本・監督の石田祐康(ひろやす)さん(34)は、実際に東京都調布市と狛江市にまたがる神代団地に住んでいる。
世間の団地への関心を、石田さんはどう見ているのだろうか。「級友たちのセリフで『おばけ団地』などと言わせたように、一部は取り壊され、時代遅れだと見る人がいるのも確かでしょう」と、一般的には団地に対してネガティブな印象があることを説明する。
そのうえで、「でも、自分の世代からすると、団地は原風景の一部になっている。とくに1960年代に建てられた4~5階建ての中層団地あたりは、1周か2周して新鮮に感じられたり、おしゃれに見えたりして、ちょっとした回帰があるんじゃないでしょうか」と語る。
「LOVE LIFE」「雨を告げる漂流団地」に続いて、この秋に公開予定の「ぼくらのよあけ」。いま団地が映画の中で描かれる理由を監督らに聞きました。さらに記事後半では、東京都内に1970年代に登場して話題を集めた高島平団地の歴史も振り返ります。
「住むのが最大のロケハン」
石田さんが生まれ育ったのは…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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