8月上旬、岐阜県可児市の伊藤英生さん(49)の自宅に簡易書留ではがきが届いた。
「この住所で間違いないですか?」
郵便局員から確認され、伊藤さんが受け取る。宛名には、見覚えのある字体で長男の名前がつづられていた。裏面の情報保護シールをはがすと、記入者の氏名欄にも長男の名前があった。
「なぜいま、隆晟(りゅうせい)からはがきが……?」
長男の隆晟さんは、10年前に事故で亡くなっている。
小学校5年生の冬だった。
近所の川沿いの広場で友達と遊んでいた時、落ちたサッカーボールを拾おうと川に入った。川の水は冷たく、隆晟さんは泳げない。約20メートル流された後、通行人の男性に引き上げられたが、そのまま意識が戻らなかった。
自宅にいた伊藤さんは、その男性からの電話で「息子さんが危険な状態です」と知らされ、「なんとか助かってくれ」と祈りながら現場に向かった。
そこにはぐったりした隆晟さんの姿があった。救急車でも心臓マッサージが続き、病院に搬送後はあらゆる処置を施してもらった。
しかし、再び目を覚ますことはなかった。
父は記憶にふたをした
隆晟さんには3人の弟がいる…
この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。
残り:1190文字/全文:1684文字
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル