増山祐史、岩田恵実、角詠之
東京都内を走る京王線の電車内で乗客17人が重軽傷を負った事件は、7日で発生から1週間となる。殺人未遂容疑で逮捕された服部恭太容疑者(24)=職業・住所不詳=の事件前の足取りが、警視庁の捜査で明らかになってきた。同庁は事件に至る経緯の解明を進めている。
逮捕容疑は、10月31日夜、東京都調布市を走行中の京王八王子発新宿行きの特急電車(10両編成)で乗客の男性(72)の胸を刃物で刺して殺そうとしたというもの。直後に車両に油をまいて火を放ったとされ、10~60代の男女16人が煙を吸うなどして搬送された。
服部容疑者は7月まで福岡市に住んでいた。同庁の調べに容疑を認め、「仕事や友人関係でトラブルがあった。死のうと思ったができず、2人以上殺せば死刑になると思った」と話しているという。
「神戸や名古屋に1カ月ずつ滞在」逮捕時は所持金2千円
関係者によると、「トラブル」は5月ごろにあった。服部容疑者は携帯電話大手のグループ企業で契約社員として働いていたが、接客をめぐる問題が起きた。会社側は配置換えしたが、その判断に納得せず7月に退職。捜査関係者によると、調べに「仕事にやりがいを持っていた」と言い、事件で使われたとみられる刃物を「6月に買った」と話したという。
福岡を出たのは退職直後。服部容疑者は「神戸市や名古屋市に1カ月ずつ滞在した。旅行をしていた」と供述しているほか、8月に都内で起きた小田急線の乗客刺傷事件に触れ、「電車での犯行を決意した。人がたくさんいる東京で、ハロウィーンに事件を起こそうと思った」などと説明しているという。
捜査関係者によると、9月末に上京し、八王子市のホテルを生活拠点にした。10月中旬にはライター用のオイル約3・6リットルを上野(台東区)の専門店で購入。同店の店員は取材に「1本で1年分になる缶を10本。珍しいと思った」と証言した。人気映画の悪役の服装に似たスーツやシャツも新宿の百貨店で買っていた。
服部容疑者は消費者金融で借金していたが、現行犯逮捕された時の所持金は2千円に満たず、警察官に「疲れた」と話した。泊まっていたホテルからはライター用の大小のオイル缶22本が見つかった。計約5リットルの量で、すべて空だった。(増山祐史、岩田恵実、角詠之)
事件直前まで家族とやり取り 「心の優しい子」との声も
服部容疑者は福岡市の小中学…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル