認知症の70歳母親を殺害した息子 事件の背景は
2020年4月、福島・南相馬市で、自宅で介護をしていた70歳の母親の顔に、折りたたんだ布団をかぶせ窒息死させるという事件が起きた。 【画像】他人事じゃない「家族介護」の問題 逮捕されたのは、47歳の息子。犯行後、自ら消防に通報し、事件が発覚した。 2020年11月9日の初公判で、起訴内容を認めた息子。
法廷では、認知症を患い、徘徊(はいかい)などを繰り返す母親の面倒をみながら、毎日の食事やおむつ交換の時間を細かく記したノートも示された。 検察側は、2020年2月ごろから、母親の顔に布団をかける行為を繰り返していたことを明らかにし、「泣き叫ぶ声が近所迷惑になると考え、犯行に及んだ」と厳しく指摘。 一方、弁護側は「責め立てられているようで、耐えられなかった」と、泣き声を少しでも小さくしようとしただけと主張した。 初公判を傍聴した福島テレビ社会部・矢崎佑太郎記者の報告。
「担当弁護士によると、介護を優先してアルバイトの勤務を調整していたという。状況を聞き取りに来た市役所の職員にも支援を求めることはなく、少なくとも10年以上1人で介護を続けていたとみられる。」 2020年11月16日、判決が言い渡されると、息子は静かに前を向き、裁判長の話に耳を傾けていた。 「おむつ交換の時に泣き叫ぶ母の声を聞きたくなかった」、「母に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と、被告人質問で反省の言葉を繰り返した息子。 判決公判で福島地方裁判所の柴田雅司裁判長は「犯行動機は身勝手で、介護サービスの利用も十分にあり得た」と指摘した一方で、「遺族は処罰を望んでおらず、本人も反省している」として、懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。
息子の献身的な介護が明らかに “涙を拭う裁判員も”
一連の取材を担当した、福島テレビ社会部・阿部加奈子記者(警察・司法担当)が解説する。 ーー「執行猶予付きの判決」となった背景は? 阿部加奈子記者:
被告の献身的な介護が認められた側面が大きいと考えられます。きょうの裁判で、柴田裁判長は「長年にわたる介護を1人で担ってきた」と指摘して、情状に酌量すべき事情を認めました。
そもそも検察側は、障害致死罪で定められた法定刑の下限である「懲役3年」を求刑していて「最も軽い部類」と主張していました。弁護側も「判決を受け入れ、控訴しない」とコメントしました ーーこれまで4回にわたった裁判員裁判を傍聴してきて、どのような点が印象に? 阿部加奈子記者:
被告の深い反省です。「いくら謝っても謝り切れない」などと、泣きながら何度も謝罪の言葉を口にしていました。認知症が進み、意思疎通が難しい母親を献身的に介護していたことが明らかになると、涙を拭う裁判員もいました
Source : 国内 – Yahoo!ニュース