竹林や畑が広がる道から交差点を右に折れる。20年前のあの日、同級生と別れ、一人で帰宅した吉川友梨さんが歩いた道を、同じ時間帯にたどった。
緩やかな坂をのぼりきると、幅4メートルほどの道の両側に木造の民家が並ぶようになる。すれ違った歩行者は2、3人。時に見通しの悪いカーブが続く道を、数台の車が行き来した。そのたび、道の脇で通過するのを待った。
わずか200メートル、たった3分の間に姿を消した友梨さん。大阪府警の捜査本部は様々な可能性を視野に捜査を進めた。
まず考慮したのが、交通事故だった。
誰かが誤って友梨さんをはね、事故を隠すために別の場所に運んだ可能性はないか。
どんな小さな事故でもブレーキの跡や車の破片などの痕跡が残ると言われる。翌日から交通鑑識係が現場に入った。路上にはいつくばって調べたが、事故を示す証拠は見つからなかった。不審な物音を聞いた証言もなく、交通事故の線は間もなく薄れていった。
身代金が目的なのか。だが、要求はなく、事件につながるトラブルを抱える家族もいなかった。事件の有力な見立てから外された。
ならば、なぜ。その答えを探すため、大量の捜査員が友梨さん宅を中心に、捜索の範囲を広げていった。
疑わしい人物を「つぶす捜査」
雑木林、側溝、マンホール、納屋、ガレージ、井戸、河川……。近くの池も15カ所以上、水を抜いた。
捜索対象は友梨さん宅の東西3キロ、南北2キロ以上にわたった。それでも、事件につながる物は見つからなかった。
初動捜査に関わった捜査幹部は嘆いた。「手がかりがあまりにも少ない。リュック、いや靴の片方だけでも見つかれば」
消去法の末、捜査本部が重視したのが、わいせつ目的の可能性だった。
発生から2年余りたったころ、捜査幹部は取材にこう語っている。
「性犯罪で逮捕された容疑者…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル