100年前に「スペイン風邪」が大流行した当時の内務省の報告書に注目が集まっている。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、カミュ『ペスト』が異例の売れ行きで話題だが、小説だけでなく、かつて刊行された感染症にまつわる本がじわじわ売れている。全容がまだ見えないウイルスと向き合う手がかりを、本に求める読者が増えているようだ。
2008年に刊行された『流行性感冒 「スペイン風邪」大流行の記録』(東洋文庫)は、1922年刊行の内務省衛生局による報告書に解説を付けた一冊だ。解説を書いている仙台医療センターのウイルス疾患研究室長・西村秀一が、古書として出回っていたこの本を入手したのが刊行のきっかけだ。「現代に復活させようという強い思いが生まれた」と記している。
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品切れ状態だったが、3月末に、ウェブで無料公開(4月30日まで)すると大きな反響があり、刊行以来初の重版になった。カタカナで書かれた文章をひらがなにし、旧字を新字に改めるなど現代でも読みやすくしているが、内容は基本的にそのまま。18年から1年以上にわたって世界中で流行したスペイン風邪では国内だけで38万人以上の死者を出したとされるが、「人の密集を避ける」といった基本は変わっていないことがわかる。西村は「あのころからもう一世紀もたとうとしている今、われわれはいったいどれだけ進歩したのだろうか」と同書で問いかけている。
西村による訳で、パンデミック…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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