井石栄司
「11月23日は何の日?」と聞かれれば、「勤労感謝の日」と答えるのがふつう。今年から新たに、「表彰で感謝を伝える日」というのが加わった。考案した企業も「わかりにくい記念日」というが、制定のねらいはどこにあるのか。
記念日に認定したのは、企業、団体、個人などによって制定された記念日の認定と登録をする一般社団法人「日本記念日協会」。トロフィーやメダルなどを企画、制作、販売する「アキツ工業」(堺市美原区)が申請し、10月15日に日本記念日協会から認定された。
同社の小川真紀社長によると、コロナ禍でスポーツ大会などが中止となり表彰の場も激減した。社内で「表彰文化」を改めて考えてもらうきっかけをつくるにはどうするのがいいのかを話し合った。その結果、記念日をつくって広め、感謝と称賛の思いを表彰という行動で身近な人に伝える日にできたらと考えたという。
記念日は11月23日。同じく感謝の思いを伝える日である「勤労感謝の日」にあわせた。考案したのはいいが、社内からは「表彰の記念日って言われてもわかりにくい」との声も上がった。
記念日を設けたのは、照れくさくてふだんは言えない感謝の気持ちも記念日があれば伝えられると考えたからだ。だから、働く人やスポーツで頑張った人だけを表彰する日ではなく、もっと幅広く感謝を伝え合う日にしたかった。
母の日もカーネーションを渡すだけで感謝の思いが伝わる。同じように、一人一人が自分にとって大切な人を表彰することで、「私にとってあなたが一番よ」と気軽に言い合える文化をつくりたかった。
「製造業は伝え下手。記念日を設ける本当の思いをSNSで発信しよう」(小川社長)。ユーチューブの「アキツチャンネル」などで発信していくという。
小川社長は「感謝の気持ちは思っているだけでは伝わらない。記念日があれば、表彰という行動に移すことができる。簡単なメッセージを書いたものでいいので、それぞれの家庭で表彰式をしてもらえれば」と話す。(井石栄司)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル