北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営する知的障害者施設で、入居するカップルが結婚や同居を望んだ場合、不妊処置を提示していた問題で、道は21日、13人が不妊処置を受けていたとする法人への監査結果を公表した。強制した事実は確認できなかったが、対応は不十分だったとして改善を指導した。
同会をめぐっては昨年12月、結婚や同居を希望した知的障害がある男女に不妊方法を紹介していたことが明るみに出た。
施設側は、障害者カップルが子育てをする困難さを保護者同席の下で説明。その上で、当人が子どもを望まなかった場合、不妊処置の方法を紹介し、8組16人が処置を受けたと説明していた。
発覚後、道は障害者総合支援法に基づく監査を実施。不妊処置を受けたとみられる当事者19人(そのほか1人はすでに死亡)に加え、家族ら10人、法人・施設関係者27人の計56人への聞き取りを進めた。その結果、10組20人のうち13人が、実際に不妊処置を受けていたことを確認した。
一方で、施設では処置を受けていないカップルの同居も確認され、処置を入居条件としたり、強制したりした事実は確認されなかったという。
ただ、当事者が意思決定をする際、不妊処置以外の選択肢を示したり、十分な情報を与えたりするなどの配慮がなかったケースがあった。
また、相談記録などの書類は、多くが保存期間の5年を過ぎて廃棄されていたが、保存期間中の書類の中には、相談内容や施設側の説明内容が記載されていないものもあった。そのため、道は21日付で法人に対し、文書で改善を指導した。
指導を受けた同法人の樋口英俊理事長は不妊処置について「強制も奨励もしていない」とした上で、「障害者の暮らし方も多様化しており、自然発生的にカップルができれば、継続して支援していきたい」と話した。(阿部浩明、長谷川潤)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル