枇杷(びわ)かな子さんが描くエッセー漫画には不思議な魅力がある。
大好きだった祖母との日常や、夫との何げないやりとり。
家に帰る途中で桜に見とれて、ドーナツを味わいながら幸せを感じた日のこと。
読んだ人が「その気持ちわかる」と言いたくなる日常の描写だ。
そんな作品の一部をまとめた書籍が「アゴが出ている私が彼氏に救われるまで」(KADOKAWA)。
本に収録されているエピソードの中では、自身のコンプレックスを隠すことなく描いた。
「出てるアゴをヤスリで削りたい」と思っていたこと。
気に入らないことがあると「台風」のように暴れる父におびえながら育ったこと。
幸せを感じると、自己嫌悪が泥のようにまとわりついて離れないこと。
明快な解決策は示されないが、前を向いて生きる様子が描かれている。
漫画の中に友人たちも登場するが、メインで描かれるのは枇杷さん自身の心情。
その理由は「描くことで誰かを傷つけたくないし、人に嫌われるのが怖いから」。
自分のことであれば、どんなに恥ずかしいことであっても描くことができる。
引き出しにしまっておいたネーム
そんな枇杷さんが、2年ほどかけてようやく発表できた漫画がある。
いつもと内容が違いすぎて、読んでくれる人たちを驚かせてしまうのではないか。
何度もネーム(漫画の設計図)を描いては、そんな思いで机の引き出しにしまってきた作品だ。
タイトルは「テストにでない…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル