2人を照らす電車のライト、生死を分けた5秒 「考えるよりも体が」

 4月13日の午後7時ごろだった。神戸朝日病院(神戸市長田区)の理学療法士、西園龍馬さん(38)は、その日の勤務を終えて帰途についた。

 仕事が立て込んで、いつもより30分ほど遅い退勤。結果的に、これが一人の人生を救うことになった。

 病院前の坂を下り、神戸電鉄有馬線の踏切前まで来たときだった。

 線路の上で80代の男性がうつぶせに倒れていた。遮断機はすでに下りていた。

 とっさに遮断機をくぐって踏切の中へ。男性に近づくと、平日にリハビリへやってくる病院の患者だと気づいた。線路の溝につまずき、動けなくなっている様子だった。

 「大丈夫ですか」。肩をたたきながら声をかけたが、男性はぐったりとして会話もままならない。

 直後、ふたりを光が照らした。カーブを曲がってきた、電車のライトだった。急ブレーキの甲高い音が響く。

 「このままだと死んじゃう」。男性のズボン付近をぐっとにぎり、手前に引き寄せて線路からずらした。

 目の前を電車が通過した。体を移動させてから、体感で5秒ほどだった。

 3両目が自分たちの前に止まった。そのとき初めて、自分も危なかったと気がついた。

 乗員が駆け寄ってくるまでに男性は問いかけに応じるようになり、興奮と混乱が入り交じった表情で「ありがとう。ありがとう」と言った。

 大きなブレーキ音に気がつき、近所の人や病院の事務のスタッフが集まってきた。スタッフと2人で遮断機の外に運び出した。

 ちょうど1カ月がたった今月13日、人命救助への貢献をたたえる「のじぎく賞」が長田署で西園さんに贈られた。西園さんは「考えるよりも体が動いた。たまたま帰りが遅れたことが人助けにつながって良かったです」。(宮島昌英)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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