漫画の海賊版サイトが配信する違法な画像データを複製して配信しているとして、講談社など4出版社が米国IT企業「クラウドフレア」を相手取り、計4億6千万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。海賊版サイトの運営者ではなく、サイトに協力しているIT企業を提訴するという異例の措置。なぜ踏み切ったのか。原告側弁護団のメンバーである福井健策弁護士を直撃した。クラウドフレアの主張とともに詳述する。
「単なる周辺サービスを提供している企業と思うかもしれないが、それは大いなる誤解。クラウドフレアは海賊版サイトにとって不可欠で枢要なサービスを提供している」
福井氏はこう説明する。
クラウドフレアは元のサイトのサーバーから送信されたデータを一時的に複製(キャッシュ)し、ユーザーに配信する「コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)」といわれるサービスを提供している。
原告の4出版社は、日本国内向けで最大手とみられる海賊版サイトがクラウドフレアと契約し、日本国内にあるクラウドフレアのサーバーから違法な海賊版データがユーザー向けに配信されているとみている。
「クラウドフレアからの配信がデータ量の99%以上」
「データ量でいうと、元の海賊版サイトのサーバーから配信されるデータは1%未満で、クラウドフレアから配信されているデータが99%以上になると我々はみている。だから今回の訴訟はいわば本丸との闘いとなる」と福井氏はいう。
CDNを使っているサイトの場合、あるファイルに1人目がアクセスしたときはサイトのサーバーからデータが配信され、2人目からはサイトのサーバーではなく、CDNのサーバーからデータが配信される。
インターネットは距離が長くなると通信速度が遅くなり、コストも高くなる。
出版社側の分析では、今回の訴訟に関わる海賊版サイトは月間3億回のアクセスがあり、配信されているデータの量は少なくとも210億メガバイトに上る。
これだけ膨大なデータを送信する設備を海賊版サイトの運営者が自ら用意することは難しく、用意できたとしてもデータ通信料だけで年間10億円を超えるという。
従って、海賊版サイトが技術的にも経済的にも運営できているのは、クラウドフレアのCDNがほとんどの配信を肩代わりしているからだというのだ。
「進撃の巨人」「ONE PIECE」など4作品だけでも被害56億円
出版社側は被害額について「進撃の巨人」(講談社)、「ONE PIECE」(集英社)、「ケンガンオメガ」(小学館)などの4作品だけみても、1社あたり約1億4千万円~約38億7千万円、合計約56億円に上ると推計。その一部として、1社あたり1億1500万円、合計4億6千万円の損害賠償を求めている。
さらに、出版社側はこれまでクラウドフレアに再三にわたって違法データの配信中止を求めてきたのに、配信が続いているという。
「他のCDN事業者は海賊版…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル