自宅で仕事の書類をつくっていた時、部屋が激しく揺れた。家がきしむような長い横揺れ。
今年2月13日夜、岩手県北上市。伊藤智江(ともえ)さん(43)はベッドに入ったばかりの娘の雪乃さん(13)に声をかけた。「大丈夫?」
頭まですっぽり毛布をかぶった娘が聞いてくる。
「震度なに?」
テレビをつけると、岩手県内陸南部は「震度5弱」。津波の心配はないと伝えると、娘はうなずき、眠った。二段ベッドの上では息子の琉(りゅう)さん(10)が寝息をたてていた。
3月11日が近づくと気持ちが重くなる。「またか。いい加減にしてよ」。揺れが収まると、智江さんはストーブを消した。
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親子は10年前のあの日、同じ部屋で揺れに襲われた。智江さんは3歳の娘と0歳の息子の頭を守りながら思った。「津波が来る。電話しなきゃ」
県沿岸部の陸前高田市の実家に…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル