能登半島地震で激しい被害を受けた石川県珠洲市。いまだ孤立状態の地区が点在するが、徐々に寸断されていた道路の復旧も進む。孤立していた奥能登北側の小さな地区に5日、記者が入った。
珠洲市折戸町新保出(しんぼで)地区。高台にある寺の境内から見下ろすと、崩れた家屋が重なり合い、運び出されたとみられるタンスや布団が道をふさいでいた。海岸に目を向けると、地震の影響だろうか、隆起した海底の岩がむき出しになっていた。
この地区では、13人の住人のうち3人が命を落とした。たまたま地区にいた住人の親戚1人も亡くなったという。
「割合では、あり得ない人数だ」
避難所に身を寄せる村山弘次さん(65)は、そう嘆く。3年前に自治体の空き家バンクを利用して、長野県から移住した。同居する妻は無事だったが、自宅の屋根や壁の一部が崩れ、「これだけ壊されてしまうと、もう住めない」と肩を落とす。
地区の電気、ガス、水道は止まり、電話も通じない。「水や食料はわずかながら、届くようになった。ただ、なんの情報もないし、ガソリンもないので避難所から動けない。備蓄や補給もいつかは底をつくかもしれない」と不安を口にした。
避難所には、他の地区の住人を含む60人ほどが集まっている。自宅が全壊したという鴨谷よしさん(82)は「一日のほとんどは寝るか、座るか。お風呂も入れないし、家が恋しい。子どもたちも助けにこられないようだ」と疲れた様子で話した。(金居達朗)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment