日本三大祭りに数えられる神田祭が11日に始まる。コロナ禍を経た4年ぶりの開催で、「5類」に移行した直後とあって、大混雑が予想される。警察は雑踏事故などを警戒するが、地元の警察署は今回、例年と異なる態勢で臨まざるを得ない事情があるという。
「4年ぶりとあって地元の祭りにかける思いは強い。当日の人出やにぎわいは未知数です」。警視庁神田署の警備担当者は言う。
神田祭は2年に1度開かれる。神輿(みこし)や山車が巡る「神幸祭」や、各町の大小約200基の神輿が神田明神(東京都千代田区)を目指して街中を練り歩く「神輿宮入」がある。例年、計30万人ほどの人出があるとされる。京都の祇園祭、大阪の天神祭と並ぶ日本三大祭りの一つだ。
前回の2021年はコロナ禍で中止された。今回は19年以来4年ぶりの開催となる。メインイベントの一つの神輿宮入は13~14日の土日にかけて行われ、署は「熱気が最高潮に達する」と警戒する。
署が懸念するのは、昨年10月に150人以上が死亡したソウルの梨泰院(イテウォン)のような雑踏事故だ。署幹部は「4年前の前回の祭りをじかに経験し、ノウハウを持った署員はほぼいない。同じような事故を起こさないように、という緊張感は相当だ」と話す。
19日からは「G7」
こうした状況にもかかわらず、祭り会場の交通整理や警備にあたる署員はいつもより少ない。今月19~21日に広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)の警備に、警視庁も開催前から警察官を投入しており、警察署もその影響を受けるからだ。
署は今回から、ラジオ放送やネット上で期間中の交通規制情報を発信する。あらかじめ迂回(うかい)路を検討してもらうなどして、周辺の混乱を避ける狙いだ。特に警戒する神輿宮入では、参加する町会に規模縮小を呼びかけ、自前で警備員を用意することも求めている。
祭りに参加する氏子町会の中には、署の要請に応えて、大学生のボランティアや民間の警備会社にみこし周辺の警備を依頼したところもある。
町会も協力を
町会の集まりである「中神田十三ケ町連合」は、神輿宮入後に複数の神輿が靖国通り沿いで1カ所にとどまる動きを、今回は見合わせることにした。伝統的に続けてきたが、混雑防止のためだ。これまで「参加者同士のあうんの呼吸」でやってきた自主警備の計画を書面化し、町会ごとに担当区域を割り振った。
同連合に入る「内神田鎌倉町会」副会長で、千代田区観光協会の理事でもある田熊清徳さんは、40年近くにわたり神田祭の運営に関わってきた。「地域を挙げて準備し、神輿を見物する。人同士をつなげる重要なイベントだ」と言う。「4年の中断は、地域の経済やコミュニティーにとって大きな打撃だった」
コロナ禍を経ての復活に、田熊さんは「完全な形でやりたい気持ちはあるが、街の平和や繁栄を祈る神事で事故が起きては本末転倒。安全のために工夫を凝らした経験が2年先、4年先の糧となり、事故なく祭りが続けられればいい」と話した。(山口啓太)
続々復活の祭り、気をつけるポイントは?
コロナ禍で中止や縮小に追い…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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