「交通事故で家族を亡くした子供の支援に関するシンポジウム」(警察庁主催)で、弟を亡くした自らの経験を語った大分市立野津原中学校3年の竹山弦伸(げんしん)さん(15)と同中1年の佳克(よしかつ)さん(13)の兄弟に対し、警察庁が感謝状を贈った。
2人は2016年3月、大分市竹矢で起きた交通事故で、弟の沓里(かずさと)君(当時4)を亡くした。自宅前の道路を手を上げて横断している最中に、男性が運転する乗用車にはねられたという。
弦伸さんは当時8歳。「心に穴が開いた」心境に陥った。「あの時、あそこで、弟が道路を渡ろうとしているのを止めておけばよかった」「弟の面倒をちゃんと見ていたらよかった」……。何度も悔やんだ。でも過去は変わらないから、必死に気持ちを立て直そうとしてきた。「(弟が)亡くなってから妹が生まれて、なんとかやってこられた」
熊本市で昨年11月に開かれたシンポジウムでは、自身の作文「私の交通安全運動 四歳のままの弟」を読み上げた。事故直後の現実と悔い。そして交通事故は、誰もが起こしてしまう可能性があること、弟は生きていれば10歳の5年生になっていたこと。
制服姿がすれ違う運転者たちの「心のブレーキになってほしい」と願い、大分市の交通指導員として通学路の安全を守ってきた父親の武志さん(55)のことも紹介し、「弟の事故のことを記憶に残して、思い出してもらえば、交通事故はひとごとではないのだと思えるはずです」と訴えた。
警察庁の感謝状は昨年12月、渡辺豊士・大分県警交通部長から兄弟に手渡された。武志さんは「交通事故被害者、そして被害者遺族として(感謝状を)受けたことを肝に据え、これからも家族で力を合わせて交通安全運動に取り組んで参りたい」とあいさつした。
弦伸さんは「感謝状をもらえてありがたいと思うけど、弟のことがあってもらったことなので悲しいとも思う」と複雑な心境を口にした。それでも前を向いて語った。
「少しでも弟のことを知ってもらい、交通事故に気をつけてくれる人が増えて事故がない世の中になってほしい」(奥正光)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment