東京都台東区のマンションで昨年3月、住民の女児(当時4)が心肺停止状態で搬送されて死亡し、警視庁は14日午前、薬品を摂取させて殺害したとして、父親の細谷健一(43)と母親の志保(37)の両容疑者を殺人容疑で逮捕し、発表した。健一容疑者は「関与していません」と容疑を否認し、志保容疑者は黙秘しているという。
捜査関係者によると、健一容疑者の姉も2018年4月に41歳で死亡し、遺体に不審な点があり、警視庁は経緯を調べる方針。
健一、志保の両容疑者の次女の美輝(よしき)ちゃん(当時4)は昨年3月13日午前9時ごろ、台東区今戸1丁目のマンションから救急搬送され、病院で死亡した。目立った外傷はなかったという。健一容疑者から「娘が息をしていない」という内容の119番通報があったという。
司法解剖の結果、美輝ちゃんの死因は「中毒死」と判明。体内からは、抗精神病薬などとして使われる「オランザピン」と、不凍液などとして主に工業用に使われる「エチレングリコール」をそれぞれ飲んだ際に生じる成分が検出された。
警視庁捜査1課は、オランザピンを服用する必要はなく、エチレングリコールは主に工業用のため、捜査を開始。昨年8月29日に両容疑者の自宅を殺人容疑で家宅捜索し任意で事情聴取していた。両容疑者がインターネットでこの2種類の薬品を買った形跡も確認されているという。
事件は自宅内で起きたとみられ、目撃者がいなかった。捜査1課は薬物の専門家の見解を聴取。美輝ちゃんの毛髪鑑定などから死亡前の一定期間、オランザピンを摂取していた可能性があることが判明した。こうした状況から誤飲の可能性は低く、両容疑者に摂取させられたとみて逮捕した。
両容疑者は、美輝ちゃんを含めたきょうだい3人と計5人暮らしだった。美輝ちゃんは入浴の頻度が少なく、幼稚園や保育園を転々としていたという。同課はネグレクト(育児放棄)などの虐待があったとみている。
登記簿などによると、健一容疑者は18年6月1日、父親が代表取締役だったホテル運営会社の代表取締役に就任した。父親は4日後に死亡。翌7月、志保容疑者が同社取締役に就いていた。健一容疑者の母親は同年1月、姉は同年4月に、それぞれ死亡していた。(増山祐史、遠藤美波、長妻昭明)
細谷美輝ちゃんの死亡をめぐる経緯
2009年11月 健一、志保の両容疑者が結婚
2019年1月 美輝ちゃんが3人きょうだいの末っ子(次女)として誕生
2023年3月13日 美輝ちゃんが自宅から救急搬送され、その後に死亡
2023年8月29日 警視庁が両容疑者の自宅を殺人容疑で家宅捜索
2024年2月14日 警視庁が両容疑者を殺人容疑で逮捕
(捜査関係者などへの取材による)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル