震度6強の揺れが襲った石川県珠洲(すず)市では6日から強い雨となった。地震で緩んだ地盤が崩れて土砂災害の危険があるとして市は同日、1630人に避難指示を出した。高齢者が多いへき地で住民はどう対応したのか。
能登半島の先端にある珠洲市は人口1万2795人(4月末時点)。65歳以上の割合が52・8%(昨年10月1日時点)と県内の自治体で最も高い。
市は6日午後5時すぎ、崖崩れや土石流が起きる恐れがある「土砂災害警戒区域」の約740世帯1630人に避難指示を発令した。だが、7日朝までに20カ所ある避難所を使ったのは最も多い時で計80人。地震で自宅が被害に遭った住民が多かったとみられる。
259世帯が対象の大谷地区で避難したのは2人だった。
「もっと指示が早ければね」。夫と2人暮らしの角和永さん(78)はそう振り返った。大雨で裏山の岩が崩れた経験があり、危険を感じたら徒歩5分ほどの避難所に逃げることにしている。
だが、避難指示は夕方で、家を出るのは夜になりそうだった。辺りに街灯は少なく懐中電灯が必要。出歩く方が危険と判断して避難を諦めた。
同じ地区の男性(71)も徒歩3分の避難所に向かわなかった。自宅のそばに斜面はあるが「角度もなだらか。今まで崩れると感じたことがない」。近くの40代女性は「地震が続いて慣れてしまった。避難指示と言われても、どれほどの人が従うのか」と話した。
一方、119世帯が対象の日置地区で、大野富美子さんは80代の母を連れて避難した。
自宅は山を削った土地にある。体調が悪い母は「自宅で過ごしたい」と訴えた。当初は「家に被害はないし、大丈夫かな」と思ったが、県外の親戚に「絶対に逃げた方がいい」と勧められ、避難を決めた。
市は防災無線などで避難指示を周知したが、戸別に働きかけたり、車で送迎したりはしていない。泉谷満寿裕(ますひろ)市長は6日の発令に際し、高齢者の避難は「隣近所や地域の皆さんにご協力いただけると思う」としていた。7日、避難者の少なさについて「(他人に)迷惑をかけたくないという遠慮がちな地域性があるのでは」と述べた。
災害時の避難に詳しい岐阜大の小山真紀准教授は「避難所以外に上階への移動といった安全確保策もある」と指摘。その上で、自宅がハザードマップ上で危ない場所にないかを把握し、土砂災害に備えた行動計画を作っておくといった点について、「平時から住民が認識するよう自治体などが促す必要がある」と話す。(小島弘之、岡純太郎、菅原普)
能登地方 8日午前まで雨
最大震度6強の地震があった石川県能登地方では7日午後7時までに、震度1以上の地震を78回観測した。気象庁は6日午後9時すぎ、同県珠洲市と能登町に大雨警報を出した。雨による目立った被害は確認されていないが、大きな揺れへの警戒とともに、土砂災害への注意を呼びかけている。
珠洲市は6日夕、約740世帯1630人に避難指示を出したが、7日午後には避難所を14カ所に減らした。今回の地震では珠洲市で1人が亡くなり、32人が負傷。能登町と富山県高岡市でも1人ずつが負傷している。気象庁によると、能登地方では8日午前中まで雨となる見通しだ。(樫村伸哉)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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