静かな団地の半分が更地になっていた。
広島市のはずれ、山林を造成してできたその団地には約40棟の住宅が建つ。
団地の中央に走る道路を挟んで北側はほとんど更地で、住宅は南側に集中している。
6月下旬。記者は5年ぶりにこの地を訪れた。
かつて見た光景がよみがえる。
道路に横たわっていた木。団地のど真ん中に転がっていた高さ2メートルほどの巨大な岩。鼻の奥を刺す泥のにおい――。そのどれもが、今はもうない。
一帯はすっかり様変わりしていた。
一人の男性が自宅前の木の手入れをしていた。
「みんないなくなってしまったなあ。独りぼっちになった気分じゃ」
「人も奪っていったんじゃ」
40年ほど前から暮らす坪井正さん(88)。そうつぶやき、肩を落とした。
妻は4年前に病気で他界し…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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