新型コロナウイルスに感染する子どもが急増するなか、5~11歳対象のワクチンが21日にも承認される。各地の自治体は接種開始に向けて準備を進めるが、個別接種と集団接種のどちらに軸足を置くのかなど対応は様々。成人らへの3回目接種との混乱を避けようと専用会場を設けるところもある。
大阪市では18日、コロナ感染の影響で101カ所の保育施設が休園した。職員へのワクチン接種が進んでいるためか、園児の感染による休園が多いという。
松井一郎市長は20日の記者会見で、5~11歳の接種について「小児科医のいるところでの接種が望ましいので、基本は個別接種になる」と述べた。これまでも「ワクチンの効果や副反応などを丁寧に説明する必要がある」とし、普段の状況を把握しているかかりつけ医による接種が望ましいとの考えを示していた。
市内の5~11歳は約14万人。すでに始まっている12~15歳の接種は小児科医による個別接種が中心で、保護者の同意や同伴を必要としている。担当者は「自治体の接種計画に影響するため、政府には具体的なワクチン供給計画を早く示してほしい」と求める。
東京都板橋区は、かかりつけ医などでの個別接種のみとする方針で、30カ所以上の協力を取り付けた。「子どもの副反応についてはデータが少なく、集団接種会場では安全が担保できないと考えた」と担当者。接種券に同封する医療機関のリストには、初診も受け入れているか明記する。
富山市は12歳以上と同様に、5~11歳も個別接種を中心に進める方針だが、「国が示す配分量や『いつまでに何人』という目標しだいでは、集団接種に切り替えざるを得ない可能性もある」とする。
このほか、三重県四日市市は、かかりつけの小児科などでの個別接種のみとする方向で調整している。現在進めている大人への3回目接種と並行して実施することになるという。対象となる5~11歳は約1万8千人。担当者は「小さい子どもは一人ひとりに接種の時間がかかる。その意味でも小児科でやっていただく」。ワクチンの配送スケジュールが分かり次第、市民に案内する。
集団接種会場の設置に動く自治体もある。
福島市は市医師会の小児科医らの協力を得て、5~11歳の集団接種会場1カ所を設ける予定だ。小児科のある医療機関での個別接種を基本とするが、オミクロン株による感染急拡大を受け、接種スピードを上げるための対応だという。担当者は「ワクチン供給から3カ月ほどで希望者への接種を完了させたい」とする。集団接種会場では、小児科の医療機関が少ない近隣自治体の子どもへの接種も検討している。
東京都文京区は、5~11歳専用の集団接種会場を2カ所設置する。5~11歳用のワクチンは成人用と取り扱いが異なる。混乱や間違いを避けるため、専用会場の設置を決めた。
ワクチンの廃棄を防ぐ狙いもある。5~11歳用は1瓶で成人用より多い約10回分あるという。「小さな医療機関では10人単位の予約を取るのが難しいという声もあった」と担当者。
那覇市はすでに開設されている12歳以上が対象の集団接種会場5カ所に加え、5~11歳向けに1カ所を新たに設置する。医療機関から副反応があった場合の対応に不安を感じるとの声が寄せられたからだ。
沖縄県がまとめた20日の新規感染者を年代別でみると、10歳未満の子どもが180人、10代が196人。市は「接種のメリットとデメリットを理解しながらなるべく受けてほしい」としている。
福岡市は5~11歳のワクチン接種について、市医師会と協議している段階だ。対象者は約10万人で、市内11カ所の小児科で実施した12~15歳の接種より対象人数が増える。接種できる小児科を増やすか、集団接種できるクリニックを設けるかなど、対応策を検討しているという。担当者は「各家庭で接種するかどうか判断できるように、国はワクチンの安全性と効果についてしっかり情報提供してほしい」と話している。
家庭内感染も多いため、家族の感染防止が重要となる。神戸市は昨秋、11歳以下の子どもがいる保護者を対象に優先接種を実施。希望者への1、2回目接種はすでに完了している。3回目接種についても、予約が取りづらい状況などが起きれば、優先枠を設けることを検討するという。(添田樹紀、新谷千布美、小林直子、棚橋咲月、松沢拓樹)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル