530人の村唯一の不動産屋 起業した23歳は空き家問題の壁に挑む

 東京湾から多摩川の源流へとさかのぼり、都県境にある山梨県丹波山村。山に囲まれる村内は鉄道も通らず、コンビニもない。

 離島を除いて関東エリアで最も少ない、人口530人の村で昨夏、23歳の青年が唯一の不動産屋「梅鉢不動産」の看板を掲げた。

 目指すのは、全国のどこでも悩みの種になっている「空き家問題」の解決だ。

コロナ禍で授業がなくなり、村に通う

 不動産業を始めたのは梅原颯大さん(23)。きっかけは大学の授業とコロナ禍だった。

 山村の地域課題の解決策を探る授業を選択し、村に通い始めた。ほどなく世はコロナ禍に突入。東京・八王子の大学では授業がなくなった。

 「もっぱら村で過ごすことになった」。地元住民と接して農作業の手伝いや特産品の販売を手がけるようになってはたと気づいた。

 「足りないのは人手じゃない。家だ」

 村は人口減少が深刻だが、街道の宿場で、旅人が多く訪れる。「ここで仕事を見つけて暮らしたいという人は少なくない。けれども、すみかが見つからなくて実現しない」と悟った。

 一方で、村では空き家が増えて困っている。この両者をつなぎ合わせれば、それこそ課題の解決につながるのでは――。そんな着想から大学を卒業後、不動産業の世界に飛び込んだ。

感じる手応え

 だが、現実は甘くない。家を貸したい・売りたい人と、借りたい・買いたい人をつなぐ、とは言っても、空き家の所有者との連絡がとれなかったり、修繕に費用がかかったり。

 手応えも感じている。開業をきっかけに全村の空き家調査を村から頼まれ、結果はまとまりつつある。自身でプログラミング言語を操り、ホームページを開設すると、多い月は1万件のアクセスがあった。「この村で成果を出せれば、ほかの地域にも展開できる」

 実は、村も「空き家バンク」を設けているが、ほとんど活用されていない。村は空き家の清掃や備品購入の資金を調達するクラウドファンディングで、梅原さんの挑戦の応援を始めた。(吉沢龍彦)

発信ツール

○梅原さんが起業した「梅鉢不動産」のホームページ https://sites.google.com/umebachi-hudosan.jp/site/

○丹波山村のクラウドファンディング https://www.furusato-tax.jp/gcf/2163/

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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