岡田昇
小学館「ビッグコミックスペリオール」編集部の副編集長、小鷲夏之さん(48)が「描きたいものが常にある、初期衝動に満ちあふれた素晴らしい新人」と評する漫画家が現れた。北海道在住のハン角斉(かくさい)さん(67)。還暦を過ぎてから漫画家になる夢をかなえ、今年10月には初単行本「67歳の新人 ハン角斉短編集」(小学館、715円)が発売された。
ハンさんが世に出るきっかけになったのは、小学館の「新人コミック大賞」。2019年、「眠りに就く時…」というタイトルの作品が小鷲さんの目にとまった。過去の受賞者には10代、20代が並ぶコンテストにもかかわらず、著者は60代の男性。だが、狂気じみたと言えるほど書き込んだ絵から、手をかけた仕事ぶりが伝わってきた。不条理なストーリーの中に幻想的でエロチックな要素もある。食い入るように読んだ。
一方、編集部内には「絵が古い」「年齢が」と厳しい声もあった。賞には届かなかったものの、ハンさんに興味を持った小鷲さんは担当者になることを名乗り出た。翌年、ハンさんの作品が「ビッグコミックスペリオール」に初めて掲載された。
「眠りに就く時…」など6作品が収められた単行本はすでに重版がかかった。小鷲さんは「ハンさんの作品には人生の不条理を味わった作者自身が反映されている。この年齢だからこそ描ける」と話す。(岡田昇)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル