「ゆくゆくは転職したいけど、職場の人に相談するわけにもいかないし、頼りにできる社外の話し相手もいないんです」 【全画像をみる】7割が転職する時代、日本人につきまとう「孤独なキャリア」問題 仕事にも将来のキャリアにも真摯な若手女性に、キャリアの悩みを聞いたことがあります。予想外だったのは、悩みがキャリアそのものというより、これからの仕事や人生について相談できる人がいない、そんな場もないという「キャリアの孤立」にかかわる問題だったことです。 コロナ禍によって、働き方も組織と個人の関係性も変化しつつある今、これからのキャリア選択に悩む人が増えています。ですが、日本には、多様で柔軟なキャリア選択を難しくする特殊な要因があります。
30年たっても実現していないこととは……
バブル経済が崩壊して以降、働く個人がキャリアの主導権をにぎり、選択する「キャリアの自立」の必要性が叫ばれてきました。 そして今、その声はますます大きくなっています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れやコロナ禍の影響を受けて、企業は業務プロセスの見直しや事業戦略の転換を急いでいます。 事業で必要とされる知識も大きく変化していくため、個人がこれからの人生や仕事に向き合い、新たなスキル形成やキャリア転換に踏み出す必要が高まっているというのです。 ですが、この指摘には落とし穴があります。 すでに述べたように、キャリアの自立の必要性については長く指摘がされてきましたが、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(2020)」の最新データによれば、25~64歳の就業者のうち、仕事に関わる自己啓発を行っている人は約3割と、自発的に学び備える人は多くありません。 キャリアの展望が開けている人も15%と少数派です。ただ「キャリアの自立」を叫ぶだけでは、その実現は難しいことは明らかです。
キャリアの孤立が、自立を妨げる
なぜキャリアの自立は進まないのでしょうか。その一因に、日本では働く人のキャリア選択を支える環境が整っておらず、多くの人が「キャリアの孤立」に陥っていることがあると考えています。 このように書くと、違和感がある人もいるかもしれません。日本ではいまだに、企業が個人の生活やキャリアを支えてくれるという考えが色濃く残っているからです。 たしかにこれまで、企業が提供する安定した雇用や賃金、企業主導で職種や勤務地が決まる人事慣行は、働く人の生活とキャリアを支えてきました。 キャリアの語源は、ラテン語で車輪のついた乗り物が通った後(わだち)を意味する「carrus」から来たと言われますが、そのメインルートは1つの組織でできるだけ長く働き、その組織で求められる知識と経験を積み、昇進していくことでした。 しかし今、このような状況は大きく崩れています。人材の流動化が進み、就業者の約7割は過去に転職を経験しています。 経団連が日本型雇用の見直しを主張したように、企業側も従業員の生涯の生活やキャリアに対する責任を手ばなそうとしています。 こうした状況にもかかわらず、企業の外で個人のキャリアを支える仕組みは十分とは言えません。 例えば、経済協力開発機構(OECD)の統計で、失業時の生活やキャリアチェンジを支える公的な支援(失業手当や公的職業訓練・公的職業紹介などの再就職支援)の規模をGDPに対する比率でみると、OECD加盟国の平均は1.1%であるのに対し、日本は0.3%と約3分の1の水準にあります。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース