娘はいつも見上げていた。
ドラゴン、飛行機、ハムスター、ペンギン……。
病室のベッドのカーテンレールにたこ糸でぶら下げたペーパークラフト。長倉輝明さん(54)が作ったものだ。
娘は言った。「空を飛びたい」
長倉紀音(ことね)さん。享年7歳。一人娘だった。亡くなって13年たった今、紀音さんは宇宙を飛んでいる。
2005年12月、4歳の時、脳腫瘍(しゅよう)が見つかった。「ふらふらしていて、まっすぐに歩けない」。保育園から連絡をうけ、病院に連れて行くと、即入院となった。小さい頭に7センチもの腫瘍ができていた。
手術を5回受け、入退院を6回、繰り返した。通勤途中や帰りに病院へ寄る。妻はパートを辞めた。夫妻のどちらかが病室で付き添い眠った。
娘の苦しそうな顔を見るのはつらい。それでも、嘆くのではなく、娘が不安にならないよう笑おう。笑おう。笑おう。「別の感情を出している余裕はなかった」
「空を飛びたい」 思い出した娘の言葉
輝明さんは眠る娘の横で、ペ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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