長野県飯田市の市平和祈念館で、旧日本軍の細菌戦部隊「731部隊」のパネル展示の見送りが続いている。運営する市教育委員会は、部隊をめぐる研究は途上で、様々な意見が存在しているためなどとしている。市教委は今年、幅広い意見を聴こうと、教育関係者らでつくる「展示・活用検討委員会」を立ち上げて議論を続けている。
731部隊は正式名称「関東軍防疫給水部」。戦時中、旧満州で細菌兵器の開発を目的に、様々な人体実験を行った。細菌兵器を実戦で使う「細菌戦」にも関わった。
初会合は今年2月に開催された。市教委の担当者は、展示内容の考え方について「学術研究の成果に依拠し、歴史史料として根拠、出典が明確」「戦争の歴史を多角的に学ぶことができる」「遺族が責められることがない」などと説明した。
祈念館では昨年5月の開館以降、部隊の元隊員が持ち帰った医療器具や医学書などが展示されているが、元隊員らの証言を含む説明用のパネルは掲げられていない。
初会合で、委員からはパネルの展示を求める声が相次いだ。一方、ある委員は「残虐なものを展示するだけで、事実をちゃんと受け止められるか。加害の残虐な歴史を受け止めるのは大変難しい」と述べた。
こうした意見を受け、市教委は3月にあった2回目の会合で、裁判で認定された部隊の説明を引用したパネルの素案を提示。7月の第3回会合では、修正案を示した。「731部隊は社会的にも様々な意見が存在しています」「裁判で事実として認められた内容を部隊を理解する入り口として紹介します」といった文言を加えた。
市教委は現在、部隊の説明用パネルを展示する準備を進めている。元隊員の証言パネルについては、今後も議論を続けるとしている。
熊谷邦千加教育長は取材に、パネルの内容について「教科書や裁判で公的に認められている表現がいいのではないか」との認識を示し、「様々な思想・信条の方がいらっしゃる。客観的で、必要最小限のものをできるだけ早く展示したい」と話した。(三井新)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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