平賀拓史
栃木県那須町で2017年3月、山岳講習会に参加した県立大田原高の山岳部員7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、このうち5人の遺族が2日、講習会の責任者ら教諭3人と県、県高校体育連盟を相手取り、3億8548万円の損害賠償を求める訴訟を宇都宮地裁に起こした。
原告は「事故は天災ではなく人災だった。安全配慮を欠いた危険な登山を行った結果の大惨事」として、提訴した。事故当日に登山を容認した県教委と県高体連の組織的な問題が事故の背景にあると主張している。
雪崩事故はスキー場付近で県高体連が開いた登山講習会で起きた。亡くなった8人のほかに他校を含む40人が負傷した。栃木県警は19年、業務上過失致死傷の疑いで講習会の責任者ら3教諭を書類送検した。宇都宮地検が捜査を進めている。
提訴に先立ち、今回の原告を含めた6遺族は20年、県と県高体連、3教諭らに対し、和解に向けた民事調停を申し立てた。遺族側は3教諭の出席と謝罪を求めたが、3人は8回の協議に姿を見せなかった。県や高体連に具体的な責任の所在を明らかにする姿勢が見られないとして遺族側が反発。調停は不成立に終わった。
記者会見した遺族の奥勝さん(50)は「県側は、『雪崩は自然災害で事故は仕方なかった』と言わんばかりの対応をしてきた。雪崩が人災だという認識を裁判で県側に持ってほしい。それがないまま和解はできなかった」と話した。
福田富一知事は「これまで県としては、再発防止策の策定など真摯(しんし)に対応してきた。訴状が届きしだい、内容を確認の上、真摯に対応していく」とのコメントを出した。(平賀拓史)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル