食卓には、唐揚げやハム入りのサラダ、油揚げのみそ汁など10人分のおかずがいっぱいに並んだ。
きょうだい8人と両親が、いつも通りの夕食を囲んでいた3月30日夜、母(44)が真剣な表情で切り出した。
「今までは県だったけど、今後、国の方の選挙にでるんだよ。参院選に出る」
母は翌日から、あいさつ回りのための東京出張が決まっていた。3日後には、立候補が正式に決まる大事な会議も控えていた。
この日が家族に伝えられる最後のタイミングだった。
仙台市の静かな住宅街に暮らす4男4女と両親の大家族。母の参院選への立候補が決まり、生活は一変しました。一番下の妹は3歳。支え役に回った父は仕事を辞め、母が不在がちになった一家には大きな不安が広がりました。5回の連載で、家族の選挙戦を追います。
「今度の選挙は大がかりで、あなたたちにも家のお手伝いとか協力してもらわないといけないよ」
言葉を重ねる母に、高校2年の長男十嗣(とうし)(16)を始め、子どもたちは「ふーん」と聞き流した。
反応の鈍さを見て、今度は父が強めに言った。
「当選したらお母さんは東京に行って、仙台に戻ってこられない期間も出てくるよ」
家からお母さんがいなくなる…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル