SNSに「死にたい」と投稿した女性らが次々と犠牲になった「座間事件」。発覚から5年がすぎ、捜査や裁判に関わってきた人たちは何を思うのか。今も問い続けているものとは。
東京地検立川支部の支部長に異動してきて3カ月余り。2017年10月31日、山本幸博さん(57)はこの日もいつも通り忙しい平日を予想していた。
しかし、執務室に入った部下の検事のひと言が衝撃だった。
「9人の遺体が見つかりました」
男の自宅から9人の遺体が見つかりました――。9人? 思わず聞き返した。
前日に発覚した事件の一報は、被害者が多くても2人だった。
こんな事件、めったに聞いたことがない。30年近く検事を務めてきていた山本さんは、「難しい捜査になるだろう」と身構えた。
事件は、神奈川県座間市にあるアパートで起きていた。支部管内にある警視庁高尾署の警察官が、行方不明者の女性を捜してこのアパートに行き着いていた。
玄関を入った場所に置いてあったクーラーボックスから頭部が見つかり、別のもう1人分のものも発見された。さらに室内の別の場所から、7人分の遺体が次々と出てきた。
報告を聞いた山本さんは、担当する検事を通常より増やして支部として万全の態勢を敷いた。9人もの犠牲者を出した犯罪の証拠を積み重ねるのは、大変な作業が予想されていた。
「争点をつくらないでほしい」
アパートの住人、白石隆浩容疑者(肩書は当時)は、逮捕後の調べに犯行を詳しく自白した。自分の意に沿わず取り調べでの黙秘を勧めた2人の弁護士を相次いで解任。刑事事件に詳しい弁護士が少なくなる中、弁護士会からの依頼で国選弁護人になったのは、20年間で120件以上の刑事弁護に携わってきた大森顕さん(51)だった。「腹をくくるつもりで引き受けた」
事件発覚から2カ月後に初め…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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