愛知県刈谷市の街角に、小学生の登下校を見つめる防犯ボランティアの「鉄人」がいる。青木一男さん(92)。30年にわたって地域の子どもたちを事故や事件から守ってきたことが自慢だ。活動に賛同する仲間は16人に増えた。
青木さんは月曜日から金曜日まで毎日、日高小学校区の街頭に立つ。紺色の上下の制服姿。「防犯」の腕章を着ける。数年前に妻を亡くし、別の学区に引っ越してからは、自転車やバスを使って通う。
ミシンメーカーやホテルなどに勤務し、定年退職を迎えた。見守り活動を始めたのは1993年。市の児童相談所で嘱託職員として働いていたときに、女子中学生が路上で不審な男に無理やり車に乗せられそうになっていた現場に出くわした。怒鳴り声を上げて男を撃退し、中学生を守った。
「子どもの安全を守らないといけない」。以来、小学生が登下校する時間帯に通学路を巡回。事故に遭わないよう、交差点をわたる子どもに声をかけたり、通学路を走る車には一時停止を呼びかけたりしてきた。
なぜ、90歳を超えても元気で活動を続けられるのか。「規則正しい生活に限ります」と青木さんは言う。毎朝、温かいお茶を飲んでから出かけ、午後9時には就寝する生活を続ける。
この30年、学区内で登下校中の子どもが巻き込まれる事故や事件はなかったという。「事故をなくすために、私たちのような活動に一人でも多くの人が参加してほしい」。青木さんがつくった刈谷地域安全パトロール隊には活動に賛同する住民16人が加わっている。
長年の功績が認められ、青木さんは今年、全国防犯協会連合会から防犯栄誉金章を授与された。18日、愛知県警刈谷署で受章を報告した。「中学生になった子どもたちから『あれ、おじさんまだやっているの!』と言われることが何よりうれしい。健康な限り努力していきます」と話した。(米田怜央)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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