最新の人工知能(AI)で美空ひばりをよみがえらせた「AI美空ひばり」。紅白歌合戦に出る前後から議論百出となり、「冒瀆(ぼうとく)だ」という厳しい声もあがった。世間の反応を企画者はどう受け止めているのか。20日に検証番組を準備しているNHKの寺園慎一エグゼクティブ・プロデューサーに聞くと「冒瀆ではない」ときっぱり言った。その理由とは。
なぜひばりだったのか
――AIひばりへの反響をどう見ていますか。
昨年9月のNHKスペシャル後はポジティブに受け止めてくれていました。だが視聴率が3~4倍ある紅白のあと、拒否反応が出てきました。
〈AI美空ひばり〉 歌手の美空ひばりの過去の音源や映像を、人工知能の「ディープラーニング」という技術で、歌い方のパターンを解析し、デジタル映像と音声で再現した試み。NHKが「NHKスペシャル」の企画で行った。
――なぜ変わったのでしょうか。
AIを受け入れる素地がない状態で、ああしたAIが歌を歌い「お久しぶりです」と言ってきたときに、嫌な感じがしたのだろうなと。
どんな人間の、どんな努力で生まれた存在か、という情報が十分に伝わらないまま、AIという存在だけが提示されたとき、拒否感が出てきたのだと思いました。
――改めてAIひばりの企画の経緯を教えてください。
AIの番組をいくつか作ってきましたが、AIはなかなかリアリティーが感じられない存在でした。技術の最高到達点を手触りのある形で示すことで、AIは人を感動させられるのか、私たちは技術をどこまで受け入れていくのか、といったことを考える材料にできないかと思いました。
――美空ひばりでプロジェクトを進めることになったのはどのような経緯だったのでしょうか。
AIで人間をデジタル上に「よみがえらせる」という技術はすでにありました。私たちにとって身近な「エンターテインメント」という分野で、人間の感情を揺さぶることができるのかを考えたときに、歌謡界の女王で、国民的歌手であるひばりさんで、という話になりました。
三つの異論
――具体的にはどんな反響がありましたか。
昨年9月のNスペの後には、「自分自身が感動した」という声のほか、「ひばりさんを好きだった自分の父親や母親のことを思い出す」という声もありました。否定的な声は思っていたよりも少なかった。(番組内で)ファンや関係者があれだけ涙するのを見ると、文句をつけられなかったのかもしれません。
――ネガティブな反応はどんなものでしたか。
大きく三つありました。亡くな…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル