千島海溝・日本海溝沿いの巨大地震による津波想定で、庁舎が浸水する可能性がある北海道内の5市町が、庁舎が使えなくなったときの代わりとなる「代替庁舎」を、業務継続計画(BCP)で定めていないことが朝日新聞のアンケートでわかった。公共施設の立地場所の地理的な事情や、財政的な問題が主な理由だ。
内閣府などによると、2011年3月の東日本大震災では28自治体の庁舎が使えなくなった。このうち6自治体は津波による被害だった。岩手県大槌町では津波が庁舎敷地を襲い、加藤宏暉町長(当時)ら幹部が死亡。行政機能が働かなくなり、被災者の支援にも遅れが出た。こうした教訓からBCPの必要性が高まり、国は自治体が代替庁舎などを定めるように求めている。
朝日新聞は昨年11月、北海道が両海溝の巨大地震による津波被害を想定する太平洋沿岸の37市町を対象にアンケートを実施し、BCPの策定状況を聞いた。
すべての市町がBCPを「策定済み」と答える一方、BCPの重要6要素の一つとされている「代替庁舎の特定」について、11市町が「特定していない」と回答した。このうち函館、知内、八雲、新ひだか、様似の5市町は、庁舎が浸水する可能性がある。
日高山脈の南端に位置する様似町は面積の約9割が森林で、海に近い平地に役場を含む中心市街地がある。庁舎のある場所は標高3・5メートル。最大約12メートルの浸水深になり、3階建ての庁舎がほぼ水没する危険性がある。BCPで代替庁舎を定めていない理由について、町の担当者は「ほとんどの公共施設が浸水想定エリアに立地し、適した施設がない」と話す。
ほかの自治体も「高台など立地条件に適する建築場所がないほか、代替庁舎の建築は財政上厳しい」(新ひだか町)、「候補となる場所は浸水想定区域か、指定避難所に該当しているため」(八雲町)などと答えた。(平岡春人、角拓哉)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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