スマートフォンのゲームをしながら車を運転し死亡事故を起こしたとして、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)の罪に問われた元県立高校教員伊藤啓介被告(46)に対し、名古屋地裁は15日、禁錮2年4カ月(求刑禁錮3年6カ月)の判決を言い渡した。久礼博一裁判長は「誰でも起こしうるような前方不注視の事故とは一線を画す悪質さがある」と述べた。
判決は、被告が運転開始から事故まで断続的にゲームの操作を繰り返していたと指摘した上で、事故時も「ゲームに気を取られていた」と認定。人命が奪われたという結果の重大性も踏まえ、「実刑は免れない」と判断した。
判決によると、このゲームは、スマホの位置情報機能を使って遊ぶ「ドラゴンクエストウォーク」。被告は2022年5月31日、乗用車で名古屋市内の交差点に進入。左手のスマホのゲーム画面に気を取られ、前方の横断歩道を自転車で渡っていた会社員高貝真也さん(当時55)をはねて死亡させた。(高橋俊成、奈良美里)
同じ愛知県内の事故きっかけに厳罰化も・・・近年は増加傾向
運転中に携帯電話やスマホを使う「ながら運転」による死亡・重傷事故は昨年、全国で122件起きた。統計がある07年以降で最多だった。
ながら運転を巡っては19年に罰則が強化され、反則金が引き上げられた。きっかけは愛知県一宮市で2016年10月に小学生男児がトラックにはねられて死亡した事故だ。運転手はスマホ用ゲーム「ポケモンGO」をしながら運転しており、遺族が厳罰化を求めて動いた。
19年に105件あった死亡・重傷事故は翌年に66件に下がったが、21年からは3年連続で増えている。県警は厳罰化の効果が薄れているとみて、取り締まりや啓発を強化する方針だ。
一方、ゲームを提供する企業側も対策を講じている。ドラゴンクエストウォークは一定速度を超えると警告が表示される仕組みになっている。だが、完全に遊べなくなるわけではなく、ながら運転の根絶はドライバーの意識の向上にかかっている。
今回の事故で亡くなった高貝さんの妻は取材に「夫の事故後も、ながら運転を多く見かけた。人を傷つけることにもなりうる。自分自身のためにも、ながら運転はやめてほしい」と訴えた。(高橋俊成、奈良美里)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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