昨年のG7広島サミットで首脳らに贈られた花瓶。その焼き上がりを見届けた3日後、陶芸の大家は息を引き取った。
カサゴやエビ、タコ、タイ、ヒラメ……。瀬戸内海を見晴るかす広島県竹原市に窯を開いた陶芸家の今井政之さんの作品は、様々な生き物たちに彩られている。
自然をこよなく愛した。しばしば自ら釣った魚をスケッチしては色とりどりの土を使い、大皿や花瓶、あらゆる陶器にその姿をあしらった。
「これは図柄とちゃうんや。この中に生き物を封じ込めて、そのまま存在させたいんや」。陶芸家の長男、眞正(まきまさ)さん(62)によると、今井さんは生前そう話していたという。
「土を元の岩に戻すのが陶芸家だ」
器本体の表面を削り、異なる土をはめ込んで模様を自在に描く「面象嵌(めんぞうがん)」の技法を確立。窯で焼くと土によって縮み方が異なるため、試行錯誤と綿密な計算が求められるという。
陶芸は、土と格闘する芸術だ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル