列車から街を眺めていたら、カニが手(ハサミ)を振っていた――。神戸市のJR神戸線で、そんな「目撃情報」がSNSに投稿され、ひそかに話題となっている。
14日正午過ぎ。元町~神戸駅間の高台にある花隈公園(神戸市中央区)に、「カニ」は確かにいた。
頭に大きな黄色のリボンを付けた、その正体は兵庫県香美(かみ)町のマスコット「かすみちゃん」だ。
企画したのは、香美町神戸営業所長の松井範好さん(49)。
平日昼に約1時間、「香美町きてね」と書いた紙とともに、ここに立っているのだという。何の目的なのか。
松井さんによると、香美町は2014年、神戸市に「神戸営業所」を設置。特産品の香住ガニや但馬牛などをPRしてきた。
しかし開設から10年がたち、「一定の効果を出すことができた」として、今年3月末で営業所の廃止が決まった。
単身赴任でたった1人の駐在員である松井さん。
「最後まで、香美町のことや特産物をできる限りPRしたい」。町役場の倉庫で保管していた着ぐるみを神戸に持ってきて、2月からこのPRを始めた。
列車が通るたび一生懸命に手を振る。汽笛が鳴る時もあり、こちらに向けて鳴らしてくれたのかな、と思うことも。
SNSには「今日もかすみちゃんに会えた」「電車に乗る楽しみが出来た」などと投稿されるようになった。
写真を撮りに公園を訪れた近くの会社員男性(48)は「2月下旬にカニがいるのに気づき、面白い取り組みだと思った。いつか香美町にも遊びに行きたい」。
松井さんは「たくさんの人の目に留まって、香美町のことを知ってもらえたらうれしいです」。
車窓からかすみちゃんが見られるのは3月末まで。
PR効果のほどは、カニのみぞ知る?(森直由)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル