性的少数者に対する理解を広めるための「LGBT理解増進法案」が9日、衆院内閣委員会で審議入り後に即日採決され、性自認を「ジェンダーアイデンティティー」と表現する与党の修正案を自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党などの賛成多数で可決した。
法案は13日の衆院本会議で可決し、参院に送られる見通し。21日までの通常国会会期内に成立する公算が大きい。
与党案のほか、立憲民主党・共産党などの案、維新・国民民主案の3案が提出され、議員立法としては異例の状況だった。「性自認」の表現が最大の論点となり、修正案は維新・国民民主案の「ジェンダーアイデンティティー」を取り込んだ。
立憲などの案は、2年前に自民を含む超党派でまとめた案と同様に「性自認」と表現。与党案は「自認の性で権利を認めれば、トイレや風呂で性を都合良く使い分けた犯罪につながるケースもある」との意見を踏まえ、「性同一性」に置き換えた。「ジェンダーアイデンティティー」は、いずれにも訳せる言葉で折衷的な位置付けだった。
また、修正案には学校設置者が行う「教育または啓発」の部分に、「家庭および地域住民その他の関係者の協力を得つつ行う」との文言を加えた。「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」と定める条文も新設した。一方、「不当な差別はあってはならない」との表現が残った。伝統的家族観を重視する自民の「保守系」議員の主張に配慮した形だ。
自民は8日午後、幅広い政党の賛同を得るため、急きょ維新に与党案への賛同を求め、維新の主張を盛り込む形で修正に応じる意向を伝達。深夜まで協議を続け、委員会に先立つ9日朝、自民、公明、維新、国民民主の国会対策委員長が会談し、合意した。
修正案提出者の自民の新藤義孝氏はこの日の内閣委の議員間の質疑で、ジェンダーアイデンティティーとの表現は、性自認や性同一性と「法的な効果は同じ」と強調。維新の岩谷良平氏も「対立軸になっていることが問題だ」として、こうした表現を用いることへの理解を求めた。
与党議員は、法案が「理念法」のため、成立してもトイレや公衆浴場などでのルールに影響がないと繰り返し主張。修正案に反対した共産の塩川鉄也氏は「時間をかけるべき議論を、短時間で行うこと自体が納得いかない」と述べ、わずか1日で審議を終えたことを批判した。(楢崎貴司)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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