かつては街中で「NHKの内藤さん」と声をかけられたが、最近は「カレーの内藤さん」とよばれる。
NHKの情報番組「あさイチ」の初代リポーターとして活躍した元NHKアナウンサーの内藤裕子さん(46)が、40歳でNHKをやめた後に選んだのは、カレーを極める道だった。
会いたい人に会えて、その思いをきき、大勢の人にシェアできる――。そんなアナウンサーという職業に憧れた。
1999年、NHKにアナウンサーとして入局。初任地は熊本で、NHK熊本局としては初の女性アナウンサーだった。
慣れない一人暮らしを支えたのは…
女子高から進んだ女子大を卒業後、初めての一人暮らし。地方暮らしも初めて。男性だらけの職場で勤務時間は不規則。「プレッシャーに押しつぶされそうになりました」
野球のルールを一から学んで、高校野球の県大会の実況中継をしたり、台風がくるとレインコートを着て現場で何時間も取材をしたり……。「慣れないことばかりで失敗の連続、怒られてばかりでした」
支えは、母親が送ってくる小包にあったレトルトカレー。「デパートの催事で珍しいカレーをみつけた」などのメモがついていた。
食卓にカレーがよく並ぶ家庭で育った。
父親はクミンやシナモンなどスパイスたっぷりで、隠し味に蜂蜜をいれたカレーを作ってくれた。母親はキーマカレーなど野菜が盛りだくさんのカレーに腕を振るってくれた。
カレーは両親の味
熊本ではNHK熊本局の近くにある「洋食の店 橋本」に通った。カレーが人気の店だった。カウンターでカレーをじっくり味わっていると、「頑張ろう」と力がわいてきた。
その後、「NHKニュース5」など報道番組のキャスターをつとめ、連続テレビ小説やNHKスペシャルなどのナレーションを担当するなどして活躍の場は全国区に広がった。
2010年、朝の情報番組「あさイチ」の初代リポーターにばってきされる。
だが、放送開始1週間前に母は帰らぬ人となった。61歳だった。
1月22日は「カレーの日」。全国学校栄養士協議会が1982年、「学校給食週間」(1月日~日)直前の日の給食メニューを、カレーにするよう全国的に呼びかけたことにちなむ。
最愛の母 思い出のキーマカレー
母は前年に膵臓(すいぞう)…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル