NHKが今年度予算で未認可の配信業務に絡む不適切な支出を決定していた問題で、稲葉延雄会長は11日、会見を開き、決定に関わった前田晃伸前会長の退職金を10%減額して支給することを発表した。また、決定に関与した前田氏以外の役員6人を稲葉会長が同日付で厳重注意したほか、6人が報酬の一部を自主返納することも明らかにした。NHKの規定に役員の処分に関するルールがないため、事実上の処分にあたる。当時の役員の半数超が責任を問われる異例の事態となった。
この日開かれた経営委員会に稲葉会長が減額支給などの案を提示し、経営委が議決した。前田氏は1月に退任したが、NHKは退職金の支給を凍結していた。前田氏の退職金額をNHKは明らかにしていないが、公表されている支給基準に基づいて計算すると、満額支給の場合、約2100万円となる。会見で稲葉会長は「今回の事案は、そのまま進んでいたら放送法違反となる恐れがあった。NHKの業務執行やガバナンスに対する視聴者・国民の信頼を損ねる事態。業務を総理する立場の会長としての責任は問われるべきだ」と述べた。
NHKによると、前田氏以外の役員6人については、伊藤浩前専務理事が2カ月分の報酬の20%を、山内昌彦理事が2カ月分の報酬の15%を、林理恵専務理事、熊埜御堂朋子理事、正籬聡前副会長、児玉圭司前理事の4氏は2カ月分の報酬の10%をそれぞれ返納する。退任した役員は在任時の報酬をさかのぼって返納するという。
問題となった支出は、衛星放送番組のネット配信を巡る関連費用約9億円で、昨年12月に前田氏や関係理事ら9人が「稟議(りんぎ)」を回し、それぞれ承認し、決定された。1月に会長に就任した稲葉氏が、問題発覚後の4月に予算の執行停止を指示したほか、局内に異例の「特命監査」を指示。前田氏ら役員への聴取を行い、支出決定は問題だと結論づけていた。
NHKによると、会長の退職金の減額支給は3例目。過去には、職員による番組制作費の着服などで2005年に辞任した海老沢勝二氏、職員のインサイダー取引問題で08年に辞任した橋本元一氏について、09年に減額して支給した。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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