「沖縄は憲法に守られた存在なのか」。そう問いかける「Z世代」(1990年代中盤以降に生まれた世代)の若者がいる。今月で憲法施行から74年、沖縄の本土復帰から49年。新たな模索を始めた関西在住の若者を訪ねた。
「自分も当事者」 本土出身のエール大生、動く
「沖縄の問題をひとごとではなく、当事者意識を持って考える必要があるのではないでしょうか」。大阪府茨木市の大学生、西尾慧吾(けいご)さん(22)は4月28日、茨木市議会に陳情書を提出した。沖縄県名護市辺野古の海で進む埋め立て工事に、沖縄本島南部の土砂を使わないよう国に求める意見書採択を求めるためだ。
拡大する市議会の議会事務局に陳情書を提出する西尾慧吾さん=2021年4月28日、大阪府茨木市、武田肇撮影
埋め立ては、政府が進める米軍普天間飛行場の移設計画に伴う。国はそこに本島南部で採取した土砂を使う事業を進める。沖縄の住民や本土から召集された旧日本兵、米兵、軍属として動員された朝鮮半島の人々――。本島南部は第2次世界大戦中の沖縄戦の激戦地で、収集されない戦没者の遺骨が土砂に眠る区域だ。沖縄県議会は「遺骨などが混入した土砂の埋め立てへの使用」に反対する意見書を全会一致で可決したが、事業は進む。
拡大する西尾慧吾さんが発案し、全国の若者らが賛同した緊急ステートメント。いまもSNSで広がりつつある
「戦没者の遺骨の混じった土砂を使って基地を作るのは、辺野古移設への賛否以前の問題。人の道に反する事業が止まらないのは、人口で圧倒的多数の本土の人びとが無関心だからだ」。そう考えた西尾さんは、抗議のハンガーストライキをした沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松(たかまつ)さん(67)に呼応し、計画の中止などを求める「緊急ステートメント(声明)」を発案。若者ら約60人の賛同を得てウェブ上に発表した。
沖縄に関心を持ったのは2015年、高校の修学旅行で訪れたのがきっかけだ。「遺骨と陶器が米軍の火炎放射器の高熱で溶け合わさった破片を見た時、それまでの無知が恥ずかしくなった」。その沖縄戦で県民の4人に1人が犠牲になった地に、今も在日米軍専用施設の8割が集中している事実に憤りを感じた。「構造的な沖縄への差別であり、平和主義・国民主権・基本的人権の尊重を原則とする憲法に守られた存在と言えない。知った以上は無関心でいられない」
拡大する高校時代、沖縄を訪ねた西尾慧吾さん(右)。沖縄戦で家族を亡くし、壕(ごう)に入って遺骨や遺品を収拾する活動をしてきた国吉勇さんから影響を受けた=2015年、那覇市、西尾さん提供
在籍する米エール大では、学生が社会運動に関わることは特別ではない。コロナ禍などで一時帰国中に行動を起こしたのは、自然なことだったという。
「一人ひとりは微力でも無力ではない」。オンライン配信を続ける中で仲間が増え、うねりが大きくなりつつある手応えを感じている。
「国益の名の下に矛盾を地方に押し込む政治体制は他の矛盾を全国どこに押しつけてもおかしくない。この国の民主主義が問われている」と語り、さらに裾野を広げる方法を模索する。(武田肇)
「民意顧みられない経験」をバネに 沖縄出身の学生
沖縄県では2019年2月、米軍普天間飛行場の辺野古移設を問う県民投票があった。有権者は18歳以上で、7割超が反対。玉城デニー知事は「はっきりと民意が示された」と述べたが、埋め立ては続行中だ。
「沖縄には憲法で保障されている民主主義がないのかと感じた」。沖縄県読谷(よみたん)村出身で、同志社大3年の上原夏美さん(21)は悔しさが今も忘れられない。当時、高校3年生だった。
拡大する同志社大で学ぶ沖縄県出身の上原夏美さん(左)と玉利萌音さん=2021年4月28日、京都市上京区、比嘉太一撮影
ただ、もどかしい思いを本土…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル