熊本県山鹿市の旧米田小(現めのだけ小)6年の時に図書室から借りた3冊の本を返さず、後悔の念を抱き続けた男性が、卒業から47年たち、本代とおわびの気持ちを寄付金として母校に贈った。同小は本に換え、男性の名前を冠したコーナーを図書室に設置。男性は12日、母校を訪れ、児童たちに「失敗しても何度でもやり直すことができるんだよ」と語りかけた。
男性は1970年春に同小を卒業し、今は三重県鈴鹿市で介護福祉事業などを営む会社社長の森一夫さん(62)。幼い時に両親が離婚し、祖父母宅で育った小学校時代。家は貧しく、新聞配達をしたり、山で掘ったタケノコを売ったりして生活費を稼いだ。そんな暮らしの中で、「違う自分になりたい、もっと強くなりたい」と学校から本を借りて読むのが楽しみだった。
同小を卒業し、中学入学直前、部屋を片付けると、返し忘れたシャーロック・ホームズの本3冊が出てきた。中学校時代、何度も返そうと思いながら、「先生たちの信頼を裏切った」という後悔がこみ上げ、足がすくんだ。高校を中退して県外に出た時には、本は無くなっていたという。
「ずっと悩み、悔やんだ47年間でした」と森さん。3年前、墓参りで偶然再会した知り合いの老夫婦から同級生の連絡先を聞き、級友との交流が始まったのをきっかけに、「学校に何らかの形でおわびしよう」と決意。2017年、同小に「3冊の本代として3万円、47年間のおわびとして47万円」の計50万円を図書購入費として寄付した。
同小は寄付金で247冊の本を購入。今年9月、図書室の入り口近くに「森文庫」を新設した。
12日に森さんと児童の交流会があり、児童代表が「本を読んで知ったこと、分かったことがたくさんあります。いただいた本を大切にします」と感謝を伝えた。森さんは今後も同校に本代の寄付を続けるという。(宮上良二)
西日本新聞
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