武井風花 平川仁 本山秀樹
東日本大震災から12年。2万人余りが犠牲になり、原発事故があった福島を中心に今も3万人が避難を続ける災害で、「心」の復興は一律には進まない。震災後に生まれた寄り添いの形が草の根で展開する一方、複雑になる被災者の悩みや不安をどうすくいあげ、適切な支援につなげるかが課題だ。(武井風花、平川仁、本山秀樹)
宮城県栗原市の訪問看護ステーション脇で2月中旬、移動傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」が開かれていた。東日本大震災で大切な人を失った被災者の悲しみを受け止めようと、地元の住職らが始めた。
テントでたき火を囲む10人ほどの輪が出来た頃、阿部朋佳(ともか)さん(27)がホットサンドを焼き上げ、運んできた。
阿部さんは同県南三陸町の職員だった父良人さん(当時53)を津波で失い、震災の半年後、母淑子さん(63)と実家近くの通大寺で供養をした。泣き崩れる母のそばで、涙をこらえた。当時は高校1年生。主催する金田諦應(たいおう)さん(66)は気になった。「悲しみを吐き出せない方がつらい」。翌夏、子ども向けの寺のイベントを手伝ってもらったのを機に、傾聴喫茶に誘った。
阿部さんはお手伝い感覚で参…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル