「報道部畑中デスクの独り言」(第147回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、国際宇宙ステーションでの日本の実験棟「きぼう」完成から、10周年を記念して開かれた記者会見について—
「宇宙に“日本の家”ができた」
国際宇宙ステーションに建設された日本の実験棟「きぼう」。その完成からはや10年となりました。
当時、土井隆雄宇宙飛行士がきぼうを冒頭のように表現したことが思い出されます。実験棟の入口には、「きぼう」と書かれた素朴なのれんが掲げられ、最先端技術とのギャップも話題となりました。
10周年を記念するイベントや式典が予定されるなか、8月27日、JAXA=宇宙航空研究開発機構の東京事務所では、10年を振り返る記者会見が開かれました。直径4.4m、長さ11.2m、大型観光バスほどの大きさのきぼうの船内実験室。これまでにさまざまな実験が行われ、およそ1800件の査読付き論文を発表、特許を5件取得したほか、3件が現在出願中だということです。
特筆すべきは、小動物を使った実験。当初はメダカを使っていましたが、それがマウスになりました。しかも宇宙空間で人為的に、地上と同じ1Gの状態をつくり出す装置を使って、1Gと無重力状態、それぞれのマウスの様子を比べるという実験に発展しました。
もともとは細胞培養のための装置でしたが、それがマウスにも応用できた…会見した小川志保・有人宇宙技術部門・きぼう利用センター長は「よくはまった」と語ります。可変重力による実験手法は、月や火星を検証できるところまで広がったとしています。
一方で、タンパク質の結晶生成実験は、筋ジストロフィー治療薬などの開発につながると期待されていますが、現状は動物実験レベルにとどまり、臨床実験には至っていません。
小川センター長は宇宙実験で得られた成果が新しい薬剤の設計につながっているとし、「10年で動物実験に到達したことは大きな成果」と強調しますが、表情はやや曇り気味。「時代の変化で、重点化をせざるを得ない状況のなかで、利用が広まっていないところはまだあるのではないかという探索がしきれていないのが残念」とも話しました。
きぼうの完成時期については、アメリカ・スペースシャトルの事故などにも翻弄される不運もありましたが、完成後は「使い倒すしかない」と関係者が話していたことを考えると、ポテンシャルを生かし切っていないという忸怩たる思いがあるようです。さらに、新材料の開発につながることが期待されている静電浮遊炉については、動作が安定し、これからという状況です。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース