アートや表現の自由をめぐる様々な議論を巻き起こした、あいちトリエンナーレの企画「表現の不自由展~その後」。展示内容に関するテロ予告や脅迫、抗議などを受け一時中止となったさなか、出展アーティストが自らコールセンターを設置したことにも注目が集まった。そこに電話をし、自らの意見を吐露した人たちは「モコモコとした、巨大な集団だった」と、センター設置に携わったアーティストは振り返る。いったい、どういうことなのか。いま、改めて「対話」を考える。【BuzzFeed Japan / 籏智広太】
「いかに同質なコミュニティの中で自分が心地良く生きているか、ということを改めて知ることができました。コールセンターをきっかけに、異なる意見が響き合う空間をつくっていきたい」
そうBuzzFeed Newsの取材に語るのは、トリエンナーレの参加アーティストのひとりでもある演出家の高山明さんだ。
そもそも、あいちトリエンナーレをめぐる抗議電話は、一部組織的とみられる大量の「電凸」が殺到。事務局や県庁の機能が麻痺し、「不自由展」を中止する一因になっていた。
再開に際しては、▽電話が10分で自動的に切れる▽通話内容を全て録音する――などの対策がとられたほか、10月8日からはアーティスト自らが電話対応する「Jアートコールセンター」を設置した。
「Jアートコールセンター」はアーティストによるプロジェクト「ReFreedom_Aichi」の一貫で、今回問題視された電話対応マニュアルなどの更新を試みるねらいがあった。高山さんはいう。
「行政の人がサンドバッグみたいにしかなり得ない状況に対して、疑問を持ったのがきっかけです。名前を言わないといけないとか、自分からは切れないとか、自分の意見も言えないとか。2時間、3時間罵倒されっぱなしみたいな状況って、単純に暴力じゃないかな、みたいな」
「公と私の狭間である電話は、法的にグレーゾーンのため、電話を使った暴力がどんどん大きくなるみたいな印象があったんですね。そこに線を引いて少し分節化し、ルールを再設定しようというのがコールセンターの設立の目的でもありました」
高山さんによると、7日間で「Jアートコールセンター」にかかってきた電話は計718件。アーティストやキュレーター、ギャラリストの計31人で7日間、かかってきた電話のうち48%に対応したという。
高山さん自身も、期間中は受話器を握った。いったい、どのような思いで電話と向き合ってきたのか。そして、どのような人たちとコミュニケーションをとったのか。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース