「遺族の無念と向き合っているのか」――。東京・池袋で2019年、暴走した乗用車で母子が死亡するなどした事故の東京地裁での公判で、遺族が21日、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた被告に、被害者参加制度を使って直接質問した。被告は「悩まれ、悲しまれ、苦しまれたと想像している。大変申し訳ない」と答えた。
質問したのは妻の松永真菜さん(当時31)と長女の莉子ちゃん(同3)を失った拓也さん(34)と、真菜さんの父の上原義教さん(63)ら。
「刑務所に入る覚悟はあるか」 遺族の問いに被告は…
松永さんが「命を奪った事実を真剣に考えたか」とただすと、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(90)は「私にも子がおり、妻と子が突然亡くなったと考えると本当につらい思いをしたと思う」。刑務所に入る覚悟があるかとの問いには「はい」と答えた。
「ペダルの踏み間違いはしていない。過失はない」との無罪主張について、「主張に無理があると思わないか」と指摘した松永さんに、飯塚被告は「車を止められなかったことは悔やんでいる」と述べるにとどめた。上原さんは質問のなかで、涙ながらに「人間は過ちを犯す。せめて過ちを認めて」と訴えた。
次回7月15日に論告求刑と最終弁論があり、結審する見通し。(新屋絵理、大山稜)
「私が許せない理由は何だと思うか」
事故で妻子を失った松永拓也さんら遺族と、飯塚幸三被告の主なやりとりは以下の通り。(――は松永さんの質問、カギ括弧内は飯塚被告の答え)
――私の妻と娘の名前を言えますか
「はい、マナさんとリコさんです」
――漢字はわかりますか。
「『真』という字に……、記憶が定かでないけど、菜の花の菜。リコさんは難しい字なのでちょっと書いてみることができないです。申し訳ありません」
被告「心苦しいが、私の過失はない」
――ブレーキペダルを踏んだ記憶は100%自信がありますか。
「はい。普通は自分が思ったよりスピードが出ていればブレーキを踏んでいるので、そう思っています」
――無罪を主張しているのですよね。
「心苦しいとは思っていますが、私の記憶では踏み間違いをしておりませんので、私の過失はないものと考えております」
――本心では主張に無理がある…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル