日本学術会議が推薦した学者6人を菅義偉首相が任命しなかったことについて、ネット上で議論になっている。 会議側は、その理由の説明や6人の任命を求めているが、政府は、今のところ応じていない。学術会議の人選は、どうあるべきなのだろうか。 ■「学問の自由への政治介入だ」と反発の声も出たが、政府は否定 「学問の自由をうたった憲法23条に違反する政治介入だ」。学術会議の新しい会員に任命されなかった6人の中からは、こんな異議の声が上がった。 学術会議は、各分野の105人を推薦したが、政府が2020年10月1日付で任命したのは99人だった。会議は、会員210人から成る国の機関で、科学者の立場から政策提言などを行っている。任期は6年で、3年ごとに半数が代わる。 1983年の参院文教委では、政府は、任命は実質的なものでなく形式的なものだと答弁していたが、その姿勢を変えた形だ。6人は、安保法制や共謀罪法などで政府姿勢に反対の立場を取っていた。任命されないケースが出たのは初めてだという。 学術会議は、ノーベル賞受賞者の梶田隆章・東京大学宇宙線研究所長を新会長に選び、梶田会長は10月2日、「学術会議は、政府から独立して、学問をベースに色々なことを発信していくものだと思いますので、そこらへんは譲るべきではない」などと報道陣を前に述べた。 一方、加藤勝信官房長官は1日の会見で、「会員の人事などを通じて一定の監督権を行使することは法律上可能だ。個々の選考理由は人事に関することでコメントを差し控える。直ちに学問の自由の侵害ということにはつながらない」と述べた。2日の会見でも、こうした考えを繰り返し、任命しなかったことへの見直しは否定した。 今回のことが報じられると、ネット上で様々な意見が出て、論議になっている。
「官僚人事を握った安倍政治の流れだが、混乱するので撤回ない可能性」
6人の任命拒否に批判的な声としては、「独立機関とは名ばかりの翼賛機関と堕してしまう」「国会で自分の意見に対して正直に証言する専門家はいなくなるのでは」といった意見が出た。一方、理解を示す向きもあり、「あまりにも特定の政党に近すぎるから外されたのだろう」「税金を使う以上は行政にその是非を判断されるのは当たり前」といった声もあった。 さらに、この機会に学術会議のあり方を見直すべきだとの声も上がった。 学術会議は、「学者の国会」とも言われているが、「現会員が新会員を推薦ってのが確かなら国会というにはほど遠いのでは?」「平等な選出というのならば全大学の全教授の自由投票で決めるべき」などと書き込まれている。 政治評論家の有馬晴海さんは、政府が任命拒否までした背景について、J-CASTニュースの取材に10月2日、こう話した。 「安倍政権が内閣人事局を通じて官僚の人事を握り、官房長官だった菅さんが実質的に束ねてきました。そんな中で、忖度できる人を優遇するようになり、菅さんも、そうした人の方がやりやすいと思うようになったのかもしれません。8年間にわたった安倍政治の流れはあると思います。首相に就任してからは、政権の方針に従わない人は変えると公言していますから、そのこともあるでしょう」 菅政権が今後、学術会議の問題をどうするかについては、こうみる。 「反対意見を排除するのではなく、いろんな意見がある中で、最終的に判断する方がうまくいくことが多いはずです。その方が反対意見を説得する過程を通じて、国民にも理解してもらえるからです。こうした作業は、以前の自民党がやっていたことで、学術会議の名簿も口出しせずにそのまま通していました。菅さんも、今回の騒ぎで気を付けなければいけないという気持ちはあると思います。ただ、任命拒否を撤回すれば、その理由を巡ってマスコミが騒いだりしますから、そういうことにはならないのではないでしょうか」 (J-CASTニュース編集部 野口博之)
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