学校に行けなくなったのは中学2年のことだった。下駄箱の靴がなくなっていた。イスに画びょうが置かれていた。ほとんど登校しないまま、中学校を卒業した。あれから30年あまり。もうすぐ50歳になる女性はこの春、新入生になった。
十分な教育を受けられないまま、中学校を卒業せざるをえなかった人たちがいます。「形式卒業者」とも呼ばれる、そうした人たちの学び直しの場が、新しい夜間中学校として広がっています。
静岡県内初の公立夜間中学校「ふじのくに中学校」の磐田本校と三島教室が今春、開校した。10~70代の14人が入学し、新たな一歩を踏み出した。
「緊張もあるけど、学校に通えるという期待感で胸がいっぱい」
三島教室に通う佐野初美さん(49)=伊豆の国市=は、そう声を弾ませる。
佐野さんは中学生の頃、不登校を経験し、勉強し直す場所を探していた。
中学2年の春。すし職人だった父の仕事の都合で三重県名張市に引っ越した。公立校に転校したが、次第に授業についていけなくなった。
「学歴がない、という後ろめたさを補いたかった」
県外からの転校生として目に付いたからか、次第にげた箱の靴を隠されたり、椅子に画びょうを置かれたりするいじめを受けるようにもなった。次第に学校に行けなくなった。
職人気質だった父は「手に職…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル