多くの幼稚園は「保育の質の充実に充てる」
今月スタートした幼児教育・保育の無償化に伴って「幼稚園の利用料が値上げされた。便乗値上げではないか」という声が、特命取材班に相次ぎ寄せられている。取材すると、多くの幼稚園は「保育の質の充実に充てる」と説明する。疑念を生む背景には、保護者とのコミュニケーション不足もあるようだ。
福岡市南区の私立幼稚園では9月30日に「お願い」と題したプリントが保護者に配られた。10月から利用料を3万2700円(給食費込み)から3万3300円(同)に600円値上げし、早朝と夕方の時間外に子どもを預かる「預かり保育」(1日600円)は月6千円だった上限をなくす-という内容だった。
新制度では、幼稚園の利用料は月上限2万5700円まで、預かり保育も共働きなど「保育の必要性」がある家庭は1万1300円まで補助がある。
通知が文書だけで理由の説明なく
疑問の声を寄せた母親は仕事をしており、毎日預かり保育を利用する。上限の廃止で、預かり保育料は月約1万2千円に。国の補助で全体の負担額は減るが「税金が園の利益に充てられるのでは」といぶかる。
納得できないのは、通知が文書だけで理由の説明がなかったことだった。「人員補強や子どものためなど、本当に必要なところに使われるなら納得できるけど…」。同園は取材に応じなかった。
同市西区の私立幼稚園も、来年4月から利用料を2200円値上げし、預かり保育の月決め割引を廃止する。園は取材に「保育の質の充実と職員の処遇改善に充てる」と説明した。同園の保護者は「説明がなく、値上げの理由がよく分からなかった」と話した。
福岡県内の私立幼稚園では他にも「環境教育充実費(月2千円)という新たな項目が増えた」「利用料のきょうだい割引がなくなった」-といった声が寄せられた。いずれの園も文書の配布だけで、保護者に直接説明する機会はなかった。
値上げの背景は
私立幼稚園が利用料を変更するには、都道府県に園則変更の届け出が必要。福岡県私学振興課によると、県内で独自の利用料を定める幼稚園は260園あり、本年度の園則変更は68件、来年度は7件(利用料の値上げに限らない)。
九州女子短大の田中敏明教授(幼児教育)は値上げの背景について(1)共働き家庭の増加などで、幼稚園に入る子どもが減っている(2)国主導で処遇の改善が進む保育士に比べ、幼稚園教諭は改善されていない-など、幼稚園を取り巻く厳しい現状があると指摘。「批判はあるが、職員の給与にきちんと反映させるならば、値上げは仕方がない部分もある」と話す。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース